新幹線内で大幅な所要時分の短縮が図れることは先の北海道新幹線想定
ダイヤで触れた通りですが、ここでは秋田新幹線在来線区間、つまり盛岡〜秋田間について細かく計算して
みます。 まずE8系(仮称)が前提なので、車体傾斜制御を在来線内でも利用することにして若干の曲線通過速度向上を 前提条件に組み入れました。元々標準軌改軌の際にATS-P化されているので、車体傾斜制御の導入に信号システム 上の問題はないでしょう。最大の問題は車輌限界が建築限界に対応できるかどうか、という点でしょうか。 次に、遅延の拡大を防ぐために交換時の待避時間を、概ね4分程度にまで拡大してあります。この結果 現在と同じ配線のケースでは平均所要時間がかえって増大していますが、これは冬季など遅延が発生し易い 時期には現行より早くなる(通年での安定性が増す)ことを狙ってのものです。安定性と平常時の速達性との どちらを優先させるか、という話なのでこちらが良いとまでは言いません。 また、多額の投資を行わずに済むよう(現実的な範囲の改良工事で対応可能なように)、線形改良を行わないことを 前提条件としておきました。 |
●車輌 ●運行ダイヤ(現行配線まま) ●運行ダイヤ(3駅間複線化) ●運行ダイヤ(6駅間複線化) ●比較 ●総括 |
●車輌 先の北海道新幹線想定ダイヤで触れたE8系をそのまま引用する。 在来線内での性能は現行のE3系同等とした。 なお、車体傾斜2度の際の曲線通過速度は車体傾斜無しの場合に比べ
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○下り
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○上り
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下りの速達型のみは現行より大幅に速くなるが(大曲+1駅停車で在来線内を現行下り最終こまち-1分を
実現)、上りは現行より遅くなったりするなど散々なものである。 とはいえその不均衡は承知の上で、線形改良はおろか配線変更も伴わなければ2分30秒〜3分程度の 時間短縮にしかならないことを確認した上で、敢えて指標として示すために最良条件と最悪条件を 設定したものである。速達列車の条件を変えないままに、この間の時間差を如何に小さくできるかが 一つの目安となるだろう。 これに沿ったダイヤグラムは次の通り(東北新幹線内は完全に同一なので北上以南は省略する)。 |
ほっかい速達:青実線(太)━━ | ほっかい準速達+こまち速達型:紫実線(太)━━ |
はやて+こまち緩行型:赤実線(太)━━ | やまつば:緑実線(細)── |
大宮発着:黄実線(細)── | 各停やまびこ:白実線(細)── |
在来線内ローカル:水実線(細)── |
●運行ダイヤ(3駅間複線化) 小岩井〜雫石間5.5kmの複線化、羽後境〜和田間13.5kmの現行狭軌側の三線軌化を想定。前例から すると、費用は100億円程度になるだろうか。 交換による上り列車のロスを抑えるためのものなので、平均及び最長所要時分にはそれ相応の 効果が期待できる。 |
○下り
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○上り
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十分に余裕時分を取って2本/時設定をしながらも、全列車で東京〜秋田間3時間30分台が可能となる。 これに従うとダイヤグラムは次のように変化する。 |
ほっかい速達:青実線(太)━━ | ほっかい準速達+こまち速達型:紫実線(太)━━ |
はやて+こまち緩行型:赤実線(太)━━ | やまつば:緑実線(細)── |
大宮発着:黄実線(細)── | 各停やまびこ:白実線(細)── |
在来線内ローカル:水実線(細)── |
○下り
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○上り
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速達型は上りも3時間30分を切る。これは本来もう2分ほどの時短が可能ではあるが、切り詰めずに
敢えて余裕を取ることで東北新幹線への影響を最小限に抑える道を選んだ。 ダイヤグラムは次のようになる。 |
ほっかい速達:青実線(太)━━ | ほっかい準速達+こまち速達型:紫実線(太)━━ |
はやて+こまち緩行型:赤実線(太)━━ | やまつば:緑実線(細)── |
大宮発着:黄実線(細)── | 各停やまびこ:白実線(細)── |
在来線内ローカル:水実線(細)── |
●比較 現行及び上記各々の4ケースで、朝夕数本限定の最速達列車ではなく概ねパターンダイヤの枠内と いえる列車の平均値及び最短値で比較する。 |
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交換の為の待避時間を各列車にどう割り振るかという問題があるだけで、平均所要時分には 大差はない。結果に大差が無い以上、どこまで改良するかは財政状況を睨んでの話となるだろう。 |
念の為記しておきますが、以上は既設設備等一部の例外を除いて全て独自に試算したもの
です。あくまで一個人の試案ですので、検索等で来られた方は誤解の無き様。 なお、引用は幾らでも御自由にどうぞ。 ○履歴 立案:2005/9/上旬 着手・車両条件・線路条件:9/中旬 基準所要時分試算・比較:10/5 各例WinDIA打ち込み:10/7 全体調整・公開:10/7 修正(誤記訂正「北上以北」→「北上以南」):2006/2/21 修正(「E6系」→「E7系」):2007/8/11 修正(「E7系」→「E8系」):2008/3/12 参考資料:○ルート・線路条件等 日本鉄道名所2東北線・奥羽線・羽越線(小学館、1986年)、 JR・私鉄全線各駅停車2東北650駅(小学館、1993年)、JR時刻表、Mapion、 鉄道ファン2000年3月号、Wikipedia(秋田新幹線、田沢湖線、奥羽本線)、 JR東日本各駅乗車人員(2004年度) ○現状ダイヤ資料 JR時刻表2005年7月号、ANA及びJAL時刻表2005年11月号 ○車輌資料 世界の高速鉄道(佐藤芳彦、1998年)、鉄道ジャーナル97年6月号及び99年3月号、etc. (以上敬称略) ※執筆中BGM:黄昏のワルツ(加古隆、1997年) (C)2005-2008 far-away(◆farawagyp.)
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