択捉連絡鉄道
 その名の通り、「北海道本土と択捉島を鉄道で結ぶとしたら」という話です。これは 完全にお遊びなので、その点については御了承あれ。

 北方四島が日本に返還されたとして、四島と本土との、また各島内の交通をどうするかという問題が あります。
 まず海路については国後、色丹、歯舞については問題無いのですが、択捉島については年によって 流氷で海面が全面結氷することもあると判ったので、まずこの線を省きました。
 次に空路。択捉島には旧日本軍の天寧飛行場があり、戦後はソ連及びそれを承継したロシアが使用しており 飛行場として現用されているので設備としては申し分無いのですが、詳しく調べてみると濃霧や吹雪によって 欠航がしばしば発生するということが判ったのでこれも安定輸送とは言い難いものでした。
 残る選択肢はトンネル建設(橋梁は問題外)。しかし、間宮海峡とそう変わらないほどに浅い根室海峡は ともかく水深数百mの国後水道は相当な深度のトンネルを掘らなければなりません。更に距離が相当に長くなる にも関わらず換気坑を随所に用意できる状況には程遠く、到底自動車トンネルには成し得ない条件です。
 そして四島内。地勢図と近年の北方領土訪問記を見てみれば、集落とそれらを結ぶ無舗装の細い道路、それ 以外は殆ど手付かずの状態で自然が残されているではありませんか。迂闊に道路を引いて、富士スカイライン及び スバルラインの二の舞となる愚を招いては後世に面目が立ちません。
 これらから、消去法として「ほぼ100%の可用性」「低公害」を兼ね備える鉄道を選択したので鉄ネタの 一つとして扱うこととした次第です。なお、環境に留意して北方領土内では全線地下線とし、地上での工事は 駅部及び変電設備程度に抑えて影響は最小限にできるよう図りました。

 ※注:高速鉄道ではないにも関わらず非常に高額の建設費を要します。国防に絡めでも しない限り予算は付けられないでしょう。

 個人的には四島が日本に返還された場合ロシア人四島居住者には最低でも永住者資格付与が 為されるべきだと思いますが、政治的な問題は主題でないのでここでは深く触れないことにしておきます。

ルート  車輌  駅詳細  基準運転時分  運行ダイヤ  建設予算・総括



●ルート
 ※:経緯度数値は全て世界測値系のものを使用。

 根室から引くのが適当かと思いきや、地勢図等を見てみると根室から国後島を海底トンネルで 直接結ぶのは困難であり、風蓮湖付近まで迂回してから海底へと進むのが現実的だろうと思われた。これでは わざわざ根室を起点にする必要は無く、根室本線の途中から分岐させるべきものだろう。
 さて、厚床から分岐させると少々距離が長くなり、もう少し短絡させられないものかと思い 見てみると、釧路と国後島南端を結んだ線に近い所に標津があった。…という 訳で、標茶〜根室標津間で旧標津線を利用する。
 標茶〜根室標津間ではルートこそ旧標津線と同一とするものの、アクセス路線として 割り切ってしまい中標津以外の途中駅は復活させない。釧路〜標茶〜中標津間は非電化の まま軌道強化で車体傾斜対応、中標津〜根室標津間は最大軸重16tの重軌条で電化とする。  なお、ここまでの路線は標津駅手前からの地下区間を除いて基本的に地上を通る。

 さて、根室標津は地下10m程度の所に建設する。ここから先は全区間に於いて在来線複線 断面トンネルである。
 まず10‰の勾配で下りながら北緯43度38分東経145度10分にある三角点へと海岸線に沿って 進み、ここから海抜-60mを保ちながら海底を通ってノツエト崎に向かう。国後島の海岸線に 沿って途中から10‰勾配で上り、旧泊村役場付近海抜-30mに「泊」【と まり】駅を設置する。シロマンベツ川河口付近から東岸に沿って旧東沸集落 付近に「東沸」【とうふつ】駅、続いて海岸線にほぼ沿って 進み旧古釜布郵便局のやや西方に「古釜布」【ふるか まっぷ】駅、ここからR1000mの曲線(狭軌最大カント105mmの下で乗り心地限界 速度が165km/hとなるR1200m未満の曲線は計画上ここだけである)で北に向きを変え、旧植内 郵便局付近に「植内」【うえんない】駅、セセキ〜クラオイ 川河口間は線形が平滑になるよう多少内陸側に入りクラオイ川河口からは再び海岸線に沿って 旧乳呑路郵便局付近海抜-10mに「留夜別」【るよべつ】駅 を置く。

 ここからは爺爺岳からできるだけ離れるように海岸線に沿って回りながら10‰で下り、旧白糠泊 集落付近海抜-290mに「国後海底」【くなしりかいてい】駅を 置く。これは青函トンネルの竜飛海底及び吉岡海底同様、定点としてのもので通常時に客扱いは 行わない。更に20‰で下り、北緯44度20分東経146度35分から最深点(海抜-613m)を経て20‰で 上る途中の北緯44度26分30秒東経146度57分0秒海抜-220mに設置する定点「択捉 海底」【えとろふかいてい】駅へと向かう。なお、最深部前後9kmはほぼ無視できる 勾配(3‰)である。
 海岸に沿って20‰で上り、旧リヤウシ集落付近海抜-20mに「リヤ ウシ」【りやうし】駅、ビヨーノツ崎付近まで海岸線に沿ってから旧満前集落方面へ 横断して再び海岸線に沿い、旧内保集落付近に「内保」【ない ぼ】駅、旧入里節集落に向かって島を横断し更に海岸線に沿って北上、旧天寧集落 付近に「天寧」【てんねい】駅を置く。
 黒木内川河口からラウス沼に向かい、旧留別村役場付近に「留別」【る べつ】駅、ここから内陸に入り北緯45度7分東経147度47分付近を通って旧紗那村役場 付近に「紗那」【しゃな】駅。道道に沿って旧別飛郵便局 付近に「別飛」【べっとぶ】駅、ここから再び海岸線に 沿い、旧蘂取村役場付近で遂に終点「蘂取」【しべとろ】駅 となる。

 復活区間標茶〜根室標津69.4km、新規建設区間根室標津〜蘂取間396km。単線区間根室標津 以南、複線区間根室標津以北。最高速度は釧路〜標茶〜中標津間で95km/h、中標津〜根室標津 間で130km/h、根室標津〜蘂取間で160km/hとする。
 輸送量に対しては過剰であるが、冗長性確保の為に根室標津〜蘂取間は敢えて複線とした。

 以上がルートの概要である。



●車輌
 距離が非常に長く、また根室標津以北は新規建設であるので旅客輸送については160km/h運転が 可能な車輌が妥当だろう。しかし789系は非常に高価であり、若干安価な車輌を投入することも 考慮しなければならない。また、四島返還の後で初めて建設可能となる以上万が一建設されると しても数十年後の話であるから、現存車輌の構造的制約には然程拘る必要がない。従って 現車が160km/h運転可能かどうかはさておいて、とりあえず根室標津以北の旅客輸送については 簡便に785系を以って代えておこう。

 ○785系3連
 輸送力はこの程度あれば十分だろう。
 ←蘂 取    根室標津→
12 3
Mc
785100
M
785500
Tc
784100
60名 49名 56名
 編成定員165名(自由席116+指定席49)
 指定席は2〜3両でも良いのかも知れないが、敢えて単純に現行のままで。


 また、貨物についてもとりあえず記しておく。
 ○電機+コキ
 300tもあれば十分だろう。牽引機はとりあえずEF210/EF510の交流専用版という事で。
L
EF810
T
コキ106
T
コキ106
T
コキ106
T
コキ106
T
コキ106
T
コキ106
機関
  40t 40t 40t 40t 40t 40t

 ○DL+コキ
 釧網本線内の軸重制限は引き上げないので牽引機はDD51とした。
L
DD51
L
DD51
T
コキ106
T
コキ106
T
コキ106
T
コキ106
T
コキ106
T
コキ106
機関 機関
    40t 40t 40t 40t 40t 40t
 編成積載荷重180t(12ftコンテナ満載時)
 僻地長距離陸運の容量としてはこの程度で十分だろう。



●駅詳細
○東沸、植内、リヤウシ、内保、留別、別飛
 対向式1面2線の旅客駅。
○泊、古釜布、留夜別、天寧、紗那、蘂取
 島式1面4線の一般駅。2線が荷扱い用。
○根室標津
 島式2面4線の一般駅。2線が荷扱い用。
○中標津
 島式2面4線の旅客駅。

 配線図はほぼこんな所。
○東沸、植内、リヤウシ、内保、留別、別飛

 これ以上ない、至極単純な旅客駅である。

○泊、古釜布、留夜別、天寧、紗那、蘂取

 旅客と貨物の区域を分断。地下空間での荷扱いには少々難があるかも知れないが、その 辺りは御容赦あれ。なお、赤線が貨物専用区域である。

○根室標津

 旅客と貨物の区域を分断、それに加え引き上げ線と牽引機付け替えの為の設備も。

○中標津

 引き上げ線付きの旅客駅。電化非電化境界。



●基準運転時分
 標茶以東では旅客列車は海底駅を除き各駅停車、貨物列車は一般駅のみの各駅に停車として計算した。
 Sおおぞらについては釧路以西が現行通り、その先は標茶、中標津、根室標津としてある。
 貨物は釧路(タ)〜根室標津間がDD51重連牽引、根室標津〜蘂取間がEF810牽引である。
札幌
からの
キロ程
根室標津
からの
キロ程
駅間
キロ
駅  名 Sおおぞら 択捉旅客 駅  名 貨物
算定時分 停車駅間
所要時分
停車駅間
平均速度
基準時分 停車駅間
所要時分
停車駅間
平均速度
基準時分 停車駅間
所要時分
停車駅間
平均速度
下り 上り 下り 上り 下り 上り
0.0
220.2
348.5
396.6
443.7
466.0
489
517
547
566
591
622
666
677
710
761
784
807
821
862
466.0
245.8
117.5
69.4
22.3
0.0
23
51
81
100
125
156
200
211
244
295
318
341
355
396
220.2
128.3
48.1
47.1
22.3
23
28
30
19
25
31
44
11
33
51
23
23
14
41
札  幌
帯  広
釧  路
標  茶
中 標 津
根室標津
  泊  
東  沸
古 釜 布
植  内
留 夜 別
国後海底
択捉海底
リヤウシ
内  保
天  寧
留  別
紗  那
別  飛
蘂  取
2:19
1:31
0:39
0:37
0:19
==













2:19
1:31
0:39
0:37
0:19
==













95.1
84.6
74.0
76.4
70.4
==

















19'00
11'00
12'45
13'00
9'00
11'15
13'30
18'45
6'45
14'45
21'30
10'30
11'00
7'00
17'45




19'00
11'00
12'45
13'00
9'00
11'15
13'45
18'15
5'45
14'45
21'30
10'30
11'00
7'00
17'45




19'00
11'00
12'45
13'00
9'00
11'15

39'00

14'45
21'30
10'30
11'00
7'00
17'45




19'00
11'00
12'45
13'00
9'00
11'15

37'45

14'45
21'30
10'30
11'00
7'00
17'45




70.4
131.8
138.5
126.7
133.3
137.8

132.3

134.2
142.3
131.4
125.5
120.0
138.6




70.4
131.8
138.5
126.7
133.3
137.8

136.7

134.2
142.3
131.4
125.5
120.0
138.6
札  幌
帯  広
釧路(タ)
標  茶
中 標 津
根室標津
  泊  
東  沸
古 釜 布
植  内
留 夜 別
国後海底
択捉海底
リヤウシ
内  保
天  寧
留  別
紗  那
別  飛
蘂  取


44'00
43'00
21'00
15'45
17'45
18'45
9'45
16'00
19'45
25'15
7'00
20'00
30'45
13'45
14'45
9'45
25'00


44'00
1:04'00

15'45
36'30

25'45



1:43'15


28'30

34'45


69.3
65.1

87.6
95.3

102.5



98.8


96.8

95.0
 根室標津以東は新規建設という事で駅進入時以外の速度制限箇所は無し、以西は現行及び以前のダイヤを参考に 算定した。その為、資料不足の中標津以西貨物については記載していない。



●運行ダイヤ
 旅客が3往復/日、貨物は2往復/日とした。
Sおおぞら・まりもリレー:青実線━━ 択捉連絡旅客列車:赤実線━━ 貨物:水実線――
 冗長性が極めて大きい為かなりの増発が可能ではあるが、通常時の需要はせいぜいこの程度だろう。
 旅客は札幌から9時間弱、貨物は釧路から約7時間。



●建設予算・総括
 さて、初めに断ってある様に経済的価値を度外視できる理由が無い限り建設できない代物であることは 明白だが、敢えて概算を行ってみた(表中単位:億円)。
区間 延長 工費(km単価) 工費(区間計) 内容
釧路〜標茶 48.1km 0.5 25 路盤強化+車体傾斜対応
標茶〜根室標津 69.4km 10 700 廃線跡に引き直し
海岸・陸部 287km 40 11480 トンネル新線
根室海峡・国後水道(浅部) 65km 70 4550 海底トンネル新線
国後水道(深部) 44km 200 8800 深海底トンネル新線
513.5km 49.9 25600  
 付帯設備も勘案すると3兆円近い事業となる。効果は国後・択捉両島への常時使用可能な交通手段が 確保されるのみであり、日韓トンネルと比較するのが妥当なレベルのものだろう。
 無論、砕氷船やILSの配備等により海路空路の冗長性を確保する方が遥かに容易であり(海底トンネルの 様に設備異常時以外の可用率100%とは行かないが)、自動車の環境破壊についても島内走行の自動車は 電気自動車に限る等の規制を設けることによりカバーできる。従って、実際に作る必然性まではない。
 これはあくまで空想上のものでしかないのだ。



○履歴
 立案:2005/2/下旬
 着手:3/26
 ルート決定:3/29
 基準所要時分:5/28
 打ち込み・完成・公開:5/30
 新規資料再確認:6/11



参考資料:○地形条件・地質・現状建造物状況等
      20万分の1地勢図蘂取、別飛、紗那、得茂別湖、安渡移矢岬
      (以上5点国土地理院、1971年)、
      20万分の1地勢図知床岬(同1999年)、20万分の1地勢図標津、根室(以上2点同2003年)、
      日本の地質1 北海道地方(日本の地質『北海道地方』編集委員会、1990年)、
      日本地図帳(昭文社、1983年)、世界地図帳(同)、Mapion
     ○既存路線資料
      JR時刻表(JR化直後及び現行)
      日本鉄道名所1函館線・根室線・宗谷線(小学館、1987年)
     ○廃止路線資料
      復刻版交通公社時刻表1972年12月(JTB、1972・2000年)
      日本鉄道名所1函館線・根室線・宗谷線(小学館、1987年)
     ○車輌資料
      785系については鉄道ジャーナル02年6月号並びに3M2T及び2M2Tの公称性能及び速度種別、
      DD51については公式諸元等データより、
      EF810(仮称)についてはEF510及びEF210の公式諸元より推定
      (以上敬称略)


※執筆中BGM:戦いの意志(作曲者不明、2001年)
        冴える心(同、2003年)
        FIGHT WITH BRAVE(同、2003年)
        狂妄のエルゴ・界に仇為す者(足立美奈子、2003年)
(C)2005 far-away(◆farawagyp.)

ダイヤ関連メニュー