フリーゲージトレインが実用化された場合の効果について少々考えて
みました。但し、車体傾斜装置及びキハ283系同様のリンク式操舵台車、局所的な若干の曲線緩和以外の
在来線に於ける速度向上策(例えば新線建設等)は計画が具体的に確定していない限り考慮しないものとします。 なお、「新幹線建設は基幹となる大幹線のみ、それ以外はGCTと在来線高速化で」が持論の人間の 筆によるものである事を予め御承知置きください。 |
●車輌 ●所要時分変化 ○長崎 ○大分 ○山陰・四国 ○羽越 ○旭川 ○釧路 ●総括 |
●所要時分変化 さて、あまりにも量が多過ぎて詳細に書いていたら1ヶ月以上を要することはまず避けられないので、ここでは 変更点の概要と主な区間の所要時分変化を記すのみに留めておく。 なお、軌間変更の所要時分は余裕を持って2分とした。 (黒字:標準時分、赤字:最速時分) ○長崎 共通変更点:G1系投入・新在連絡点新鳥栖
…最速達列車でも所要時分が半減もしない上に末端部にしか益がないものを4000億掛けて造るのと、その6割程度の 効果で沿線全体に恩恵があるように3〜400億程度で改良するのと、どちらが理に適っているのやら。 ともあれスーパー特急方式での新線建設を行わずとも、GCT投入で新鳥栖以北の速度向上によって10分、線形改良と 最高速引上げによって更に10分程度の時間短縮は可能となる。 ○大分 共通変更点:G1系投入・新在連絡点小倉 (省略) 書くまでもない。既にこれ以上の高速化は難しい所に来ている。従って山陽新幹線直通による便益のみとなる。 ○山陰・四国方面 既にHIT氏のよみの国研究所に詳細な検討結果が存在するので、ここでは 略すことにする。 ○羽越 共通変更点:G1系投入・新在連絡点新潟・在来線地上設備車体傾斜対応・新潟停車3分 |
|
※1:新幹線最速列車は新潟速達が使命のシングルナンバーではなく、併結に用いり得る300番台の最速列車。 ※2:熊谷・本庄早稲田・上毛高原・浦佐・燕三条・豊栄・中条通過 やはり、GCT単体では乗換時分の無駄を省く以上の効果が発現しない。地上設備の車体傾斜制御への対応を 行い、軌道の高速化対応を施して漸く大幅な時間短縮が可能になるのである。 なお、最終案で豊栄及び中条を通過としたのは快速及び普通で補える位置であると判断した為である。 軌道の現状及び前例から、酒田以南に限れば地上側の対応費用が300億を大きく上回る事はないだろう。 ○旭川 一応参考までに記しておく。 共通変更点:新在連絡点札幌・地上設備車体傾斜対応・札幌停車3分
こと北海道新幹線に於いては、275km/h制限の為に乗換えるよりもGCTで直通する方がかえって遅くなるという 事態が生じる。そもそも道内の都市間輸送需要の殆どは札幌起点で成り立つものであるから、札幌から道南に 向かって新幹線区間へ直通しても大した意味はないのである。寧ろ、仮にGCT導入計画があったとしても それを行わず、その分在来線高速車輌への投資を増やす方が賢明だろう。 なお線形改良は全くできない訳ではないが、大きな費用を投じずに可能な箇所は高速曲線2箇所の緩和のみと 効果が薄いので(短縮時分はせいぜい30秒)、事実上できないに等しい。 ○釧路 共通変更点:G2系投入・新在連絡点札幌・札幌停車3分 |
|
※1:帯広までの標準時分にはSとかちを含む。 ※2:南千歳乗継ぎ 以上の通り、やはりGCT化によりかえって所要時分が増大してしまい、別立てにする方がかえって 早く着くという結果を生んでしまうので速達化の観点から見ればGCT化しないことが望ましい。帯広〜釧路 間(正確には新札幌〜釧路間)に於いてはGCTの場合の方が速くなっているが、これは単純に加速性能の差に 拠るものであってGCTであることに特段の意味はない。それよりも1200PS級の高出力気動車を導入する 方が、導入費用も維持費用も遥かに低廉で済むのでより効率的だろう。 なおこの区間に於いては140→160km/h向上による時間短縮効果が微小であることは比較的広く知られて いるので、160km/h向上場合の計算は省いた。 宗谷本線についても同様の結論しか出ないので、これは略す。 |
●総括 以上の通り、GCTを使用して効果的なのはあくまで直通そのものに意味がある場合、或いはそれを口実にして 性能向上及び車体傾斜機構による所要時分短縮を図る場合程度だろう。高性能車輌を投入した所で、在来線の 高速化は既に車輌側(600m条項を除く部分)よりも軌道側の限界に支配されているようなものなので大した効果は 見込めないと思われる。 その上最高速度が275km/h程度に制限されてしまう為に、300km/h超の超高速運転が計画されている線区では かえって遅くなってしまうのである。 実際の所、新幹線区間への直通を除けばGCT及びミニ新幹線は、それ単体は錯覚の様なものである。所要時分 短縮効果の殆どは在来線改良に拠るものであり、乗換え時分も新八代で行われている対面乗換えをすれば3分までは 極端でも10分とは必要あるまい。 寧ろ問題なのは、高速運転線区での600m規則の撤廃または緩和が可能になるかどうかだろう。130km/h-600m同等の 制動力では150km/h-800m、160km/h-950m、180km/h-1200m、200km/h-1500mと、1000mが許容されれば従来ブレーキ でも160km/h対応可なのでこの辺りが落とし所になるのではないだろうか。 とりあえず、DMU-GCTは論外だろう。北海道に適さない以上、仮に開発に成功したとてまともに成果を上げる ことは困難と思われる。開発費用よりも山陰及び四国の主要部電化の方がかえって安く上がるかも知れない。 |
念の為記しておきますが、以上は既設設備等一部の例外を除いて全て公表された計画を下敷きとして
独自に試算したものです。あくまで一個人の試案ですので、検索等で来られた方は誤解の無き様。 なお、引用は幾らでも御自由にどうぞ。 ○履歴 立案・着手:2005/1/中旬 公開:1/24 参考資料:○ルート・線路条件 JR時刻表、Mapion ○車輌資料 鉄道ファン92年4月号及び00年3月号、etc. 第163回鉄道総研月例発表会 資料各種 (以上敬称略) ※執筆中BGM:運命と絆(Wong Wing Tsan、1997年) (C)2005 far-away(◆farawagyp.)
|