伯備線高速化
 停車駅間平均速度を見てみたところ区間による偏りが顕著に現れ、更にその遅い区間の延長と 直線距離とを比較してみたところかなりの差が確認できたので、以前は見送った線区ながら敢えて取り上げて みました。
 新大阪以西での285〜300km/h運転速達列車の4本/時以上運転が実現し、更に300系が早晩東海道から完全撤退する 可能性すらも見えてきた現在、270km/h走行試験すら未だに行われておらず2次車も空気バネ式に頼るのみで 車体傾斜5度に対応しているとは考え難い現状を見ると、この区間へのGCT投入には懐疑的にならざるを 得ません。
 そして仮に横付けホームを増設してコンコースを急がずに済むようにできるならば、新八代方式を アレンジした新潟方式(予定)の方がGCTより現実的かな、と。
 ……そう思ったら、改築の結果用地の余裕無しですか。そういえば07年7月に乗り換えた際は、従来の評判とは 裏腹にスムーズだったので奇妙に感じた記憶が。
 ともあれ、中国横断新幹線という基本計画線の存在を利用し、更に新幹線鉄道規格新線と新幹線直通線を 利用すれば結構な効果を出せるのではないか――という訳で、隘路区間の抜本改良案を一つ考えてみました。

概要
新線ルート
 備中高梁〜新見間  新見〜根雨間
基準運転時分
 備中高梁〜新見〜根雨間  その他の区間
運行ダイヤ案
所要時分変化等

総括



●概要
 前述の通り、新線付け替えの手段として新幹線鉄道規格新線を利用する。先の新幹線鉄道規格新線解釈で 述べた通り、適切な保安対策を行えば制度上、途中駅を設置することそれ自体に問題はない。特に 備中高梁〜新見間は各駅がほぼ一直線に並んでいるため、並行する旧線を完全破棄することも可能と判断した。
 新見〜備中神代間は芸備線に移管すれば良いとして、問題は備中神代〜根雨間、特に現在2本に1本のやくもが 停車している生山の扱いが問題となる。
 ……が、とりあえず経営分離問題の判断は棚上げして、ここでは経営分離または廃線がされる場合を想定 する。従って、新幹線鉄道規格新線は貨物を通せる規格にしなければならない。
 なお仮に全線を新幹線化しようとも、対鳥取東部〜中部までもが際立って高速となるわけではないので、智頭 急行はのぞみ接続を姫路できちんと取るようにダイヤを調整し、因美線をきちんと整備すれば経営に特段の支障は ないものと考えておく。

 新線区間に於いては、以下の条件を満たすものとする。
  • 最小曲線半径は本線4000m、本線を除くホームに沿う曲線1000m、退避線等400m。
  • 貨物走行を考慮して最急勾配25‰。駅部分の勾配は3‰以内。
  • 軌道中心間隔は4300mm以上。
  • 縦曲線半径10000m以上。
  • 退避駅以外では通過線を設けず、特急停車駅はホームドアで対処。地元利用の為の棒線駅は ほくほく線同様に通過前後にはホームから旅客を締め出す方向で。モニタで遠隔管理を行うことも可能だろう。
  • 棒線駅でもホームの縦深は5m以上が求められるので、できるだけ延長を縮めた上でスペースを 待合室等に有効活用。尤も、原則締め出しなら安全性の証明が可能なので5mも必要ない可能性はある。
  • 当然、踏切は設けない。
  • 走行抵抗、騒音対策等を考慮して路盤は原則複線とする。
  • 新在併用を前提とするため、カントは軌間1067mmに於いて105mm:1435mmに於いて141mmとする。

 また用地買収の都合上、駅設置の為に必要な場合以外はできるだけ集落を回避する。
 既設線流用部分(将来200km/h以上に達した際に新幹線鉄道直通線となり得る部分)は可能な範囲で建築限界を 拡大し、できるだけ踏切を排除しておくことが望ましい。
 建築限界・構造等はAC25kVで取るが、架線はひとまずDC1500Vとしておく。

 特急用車輌は383系をベースに、定出力域を高速側に拡大し160km/hまで維持できるものとした。当面は直流区間である以上 無茶な高出力を期待することはできず、定出力域を拡大することで高速性能を確保するのが無難だろう。70km/h弱 から160km/hまで定出力域が続くが、回転数比としては120km/h程度から285km/hまで続くのと同程度のものであり、コスト面は ともかく技術的には問題ないものと判断した。
 在来線ではあるが、特急の算定上の常用減速性能は新幹線の場合と同様に設定する。


●新線ルート
○備中高梁〜新見間
 この区間は各駅がほぼ一直線に並んでいるため、建設する範囲の並行旧線を完全破棄することも可能と 判断した。なお、集落通過と河川の平行渡河をできるだけ避けた結果、8割方R4000という結構面倒な 構造になった。
 備中高梁下り方約1950mで現行線から分岐し、高梁川及びR180と並走する都合上高架の多用は避けられ ないが、高さをできるだけ抑えつつ石蟹に向かう。備中川面、方谷は現行駅直上、木野山は下り方に150m程度 移動した位置、井倉は300mばかり南側移動して集落背後の山を貫くトンネルの中に駅を 設置する(尤も、位置の都合上トンネル坑口に設置することもできるが、ひとまず 仮の位置として設定する)。石蟹上り方200mで現行線と合流。ギリギリまで15‰で既存施設を 回避するが、この位置だとR180沿いの栄華楼周辺建築物には動いてもらう必要が生じてしまうのだろうか。
 方谷〜井倉間では滝を避けるためにやや東側に寄って進行する。その際に本来は必要のない余分な曲線を 挟むが、これは工事難度と観光資源の保全を考慮してのものである。
 また、石蟹〜新見間でR4000を維持しつつ後述の新見〜根雨間に繋ごうとするとどうしても現行新見を 利用できなくなってしまうので(新見市街地をぶち抜いてかつ石賀を対岸方向へ 数百m移転するか、または現行新見の250mほど山側のトンネル内若しくは掘割にホームを設けるかの いずれか)、新線区間は新見付近ではなく石蟹手前までとする。この先、新見までの間は 軌道強化を行い直線区間で130km/hを出せるようにする。可能ならば、併せて軌道中心間隔を4300mmに拡大する ことが望ましい。
 なお、石蟹下り方の踏切を立体化等により撤去して、1.3kmばかりの軌道中心間隔を調整した上で 下り方約1kmの地点からR4000で新見方に向かえば新幹線標準規格内で後述の新見〜根雨間に接続 できるため、これは遠い将来フル規格化することが可能なルートであるので、以上の様に建設して しまえば手戻り工事は発生しない。

 新線延長19.9km、各駅位置は備中高梁起点でそれぞれ木野山4.1km、備中 川面7.4km、方谷11.4km、井倉17.9km、石蟹22.1km。
 勾配曲線図は次の通り。


○新見〜根雨間
 大倉山・花見山を避けること、局所的なものを容認しつつ全体的にできるだけ土被りを抑える こと、集落地上の通過をできるだけ抑えること、距離を短縮することを考慮した 結果、足立(R4000ではどのみち近くを経由することになる)を経由して からR180沿いに根雨へ向かうルートが適すると判断した。前述の通り、新見〜根雨間の各駅の存在は ごく自然に通せる足立を除きルート設定上無視する。また既存駅との距離の都合上、足立以外への 地元サービス駅設置は考慮しない。
 新見を出てすぐ、現行線ではR300で北側に曲がる地点で分岐し直線でトンネルに入る。R4000を挟み若干 方向を修正してから約105度転回(7300m)のR4000大カーブを経て、天銀山の北側を通り千屋実方面へ 向かい、千屋集落付近からは一路根雨へと向かう。途中、新見起点12.8km地点で 土被り約420m、26.7km地点(明地峠)で土被り約430m。
 高速走行に支障が、または貨物輸送に難が生じるほどの急勾配を避けた結果、新見起点11.0km地点から 根雨の直前までは22.2kmの長大トンネルとなったが、これが命名されるとすれば「伯備トンネル」とでも なるのだろうか?

 新線延長33.2km、各駅位置は新見起点でそれぞれ足立9.6km、根雨34.1km。
 勾配曲線図は次の通り。




●基準運転時分
○備中高梁〜新見〜根雨間
 備中高梁〜新見〜根雨間については運転曲線より正確に求めた。特急は3M3T編成重量253tで、普通 は115系2M1Tで計算した。走行抵抗は7+0.0214v+1.1245v^2/W[N/t]を使用。
 備中高梁、新見、根雨の構内分岐制限は本線に関連する分岐器を交換することを前提に50km/hとする。
 制限速度及び最高速度-5km/hを上限として算定するなど、細かな方法は過去の例と同様である。

 まずは特急列車(新見停車)の場合の算定から。なお駅名黒字が停車駅、赤字が通過駅である。
岡山から
の実キロ
駅間
キロ
駅  名 駅間
最高
速度
運転曲線駅間所要 余裕時分 基準時分 停車駅間
所要時分
停車駅間
平均速度
下り 上り 下り 上り 下り 上り 下り 上り 下り 上り
49.9
72.0
76.7
110.8
22.1
4.7
34.1
備中高梁
石  蟹
新  見
根  雨
160
130
160
10'13
3'29
16'01
10'02
3'33
15'27

0'30
0'30
0'30

0'30
10'15
4'00
16'45
10'30
3'45
16'00
14'15

16'45

14'15
16'00
112.8

122.1

112.8
127.9
29'43 29'02 1'00 31'00 30'15   117.9 120.8
 新線内のみ最高160km/h、既存線の走行区間では最高130km/h、383系ベースであるのでR300の制限 速度は90km/hとした。

 続いて普通列車の算定を。
岡山から
の実キロ
駅間
キロ
駅  名 駅間
最高
速度
運転曲線駅間所要 余裕時分 基準時分 停車駅間
平均速度
下り 上り 下り 上り 下り 上り 下り 上り
49.9
54.0
57.3
61.3
67.8
72.0
76.7
86.3
110.8
4.1
3.3
4.0
6.5
4.2
4.7
9.6
24.5
備中高梁
木 野 山
備中川面
方  谷
井  倉
石  蟹
新  見
足  立
根  雨
100






100
4'11
2'58
3'27
5'00
3'31
4'58
7'49
16'39
4'10
2'54
3'20
4'54
3'33
4'53
7'23
16'47
0'30




0'30
0'30
0'30
0'30




0'30
0'30
0'30
4'45
3'00
3'30
5'00
3'45
5'30
8'30
17'15
4'45
3'00
3'30
5'00
3'45
5'30
8'00
17'30
51.8
66.0
68.6
78.0
67.2
51.3
67.8
85.2
51.8
66.0
68.6
78.0
67.2
51.3
72.0
84.0
48'33 48'01 2'00 51'15 51'00 71.3 71.6
 全線で最高100km/h、曲線通過速度は電車列車の本則通り。2M1Tで更に加減速区間以外に20‰超が存在しなく とも、高速線形であるが為に新見〜根雨間では抑速時の容量による制限を考慮する場面が僅かに生じた。
 しかし、それにもかかわらず備中高梁〜新見間25'30+停車時間、新見〜根雨間下り25'45上り25'30+停車 時間と、トータルでは現行やくもよりも速くなってしまった。特急との所要時分差がこの程度に収まれば、複線 であれば新線区間内での退避は最早必要なく、備中高梁、新見、根雨で適宜調整すれば十分である。

 また最高速度の都合上、221系を利用する手もある。性能こそ平坦線用ではあるが、抑速制動が備わって おり、221形4連2M2Tからサハ221を抜き取り2M1Tとしてしまえば山岳線高速走行に転用することも計算上は 可能となる。
 但し回生なので抵抗器の容量を考慮する必要がない反面、回生失効の問題が存在するので、回生電力吸収装置 または饋電延長等が必要な点が新たな課題として浮上する。
 とりあえず、115系が老朽廃車されない限りは考え難いのでこの場合の算定までは行わない。

 最後に貨物列車の算定を。EF64、600t牽引高速貨物とする。また下り勾配では、弱界磁領域に於ける引張力曲線の 延長線上を抑速制動力の上限として速度を制限する。被牽引貨車はコキ50000を想定。
 BC圧力は管圧力1.0kg/cm2(=98.0665kPa)で計算。
岡山から
の実キロ
駅間
キロ
駅  名 駅間
最高
速度
運転曲線駅間所要 余裕時分 基準時分 停車駅間
所要時分
停車駅間
平均速度
下り 上り 下り 上り 下り 上り 下り 上り 下り 上り
49.9
72.0
76.7
110.8
22.1
4.7
34.1
備中高梁
石  蟹
新  見
根  雨
95

95
17'15
5'06
30'24
16'23
5'20
33'21
0'30
0'30
1'00
0'30
0'30
1'00
17'45
5'45
31'30
17'00
6'00
34'30
23'30

31'30

23'00
34'30
68.4

65.0

69.9
59.3
52'45 55'04 2'00 55'00 57'30   66.4 63.5
 全線で最高95km/h、曲線通過速度は貨物列車の本則通り。分岐器通過速度は先の2例より-5km/h。備中高梁、新見 及び根雨の構内制限速度は45km/h(計算40km/h)、新見は運転停車前提とした(駅名は黒色であるが便宜上のものである)。
 比較的まともな勾配になった分だけ速度を出せるので、備中高梁〜新見間に於いて下り23'30上り23'00、新 見〜根雨間で下り31'30上り34'30と結構速くなった。この程度の速度を出せれば、一部列車のみ退避という現状程度の 設定でも運行可能となるだろう。


○その他の区間
 岡山〜備中高梁間及び根雨〜米子間については、特急は現行ダイヤを元に383系の性能を勘案し、適宜 所要時分を減じて簡便に求めた。米子〜出雲市間は、各区間でキハ187を含む現行最速のものを流用。つまり 山陰本線内の複線化が進行しなければ退避を行わない列車しか乗れない、あくまで基準としての数字で ある。…と思いきや、後述の通りパターンに乗せる限りは全てすれ違い地点を複線区間内に置くことが 可能なので、大半の列車に適用可能となってしまう。
 曲線改良等は考慮しないので、特急以外の所要時分は現行通りとする。
 なお、便宜上前述の新線区間についても併記する。

 ・特急
岡山から
の実キロ
駅間
キロ
駅  名 駅間
最高
速度
現行同等(根雨停車) やや速達気味(根雨通過) 駅  名
基準時分 停車駅間
平均速度
基準時分 停車駅間
所要時分
停車駅間
平均速度
下り 上り 下り 上り 下り 上り 下り 上り 下り 上り
0.0
15.9
49.9
76.7
110.8
142.7
171.6
178.2
188.6
204.3
15.9
34.0
26.8
34.1
31.9
28.9
6.6
10.4
15.7
岡  山
倉  敷
備中高梁
新  見
根  雨
米  子
松  江
玉造温泉
宍  道
出 雲 市
130
130
160
160
130
120


120
10'30
21'00
14'15
16'45
20'00
21'00
5'30
7'30
10'30
10'30
20'00
14'15
16'00
20'30
21'00
5'30
7'30
10'30
90.9
97.1
112.8
122.1
95.7
82.6
72.0
83.2
89.7
90.9
102.0
112.8
127.9
93.4
82.6
72.0
83.2
89.7
10'30
21'00
14'15
16'15
19'30
21'00
5'30
7'30
10'30
10'30
20'00
14'15
15'30
20'00
21'00
5'30
7'30
10'30
10'30
21'00
14'15
35'45

21'00
5'30
7'30
10'30
10'30
20'00
14'15

35'30
21'00
5'30
7'30
10'30
90.9
97.1
112.8
110.8

82.6
72.0
83.2
89.7
90.9
102.0
112.8

111.5
82.6
72.0
83.2
89.7
岡  山
倉  敷
備中高梁
新  見
根  雨
米  子
松  江
玉造温泉
宍  道
出 雲 市
2:07'00 2:05'45 96.5 97.5 2:06'00 2:04'45   97.3 98.3  
 岡山〜伯耆大山間の既存線走行区間では最高130km/h、伯耆大山以西は120km/h。


 ・普通
岡山から
の実キロ
駅間
キロ
駅  名 駅間
最高
速度
基準時分 主要駅間
表定速度
下り 上り 下り 上り
0.0
15.9

49.9
76.7
110.8
137.9
142.7
15.9


26.8
34.1
27.1
4.8
岡  山
倉  敷
総  社
備中高梁
新  見
根  雨
伯耆大山
米  子
100





100
17'00
10'30
24'30
28'00
26'15
28'00
7'30
16'30
9'30
23'00
28'00
26'00
26'30
7'30
56.1


57.4
77.9
58.1
38.4
57.8


57.4
78.7
61.4
38.4
2:21'45 2:17'00 60.4 62.5
 全線で最高100km/h。

 なお備中高梁〜根雨間以外は一切の追加改良を考慮していないので、そこまで投資を行えば それぞれもう数分は縮められるものと思われる。



●運行ダイヤ
 ここでは特急の代表例のみを記載した。それ以外はダイヤグラムを以って代える。

 ○下り
列車番号 1015M 1017M 4031M







5



7






東  京         2150 2200
岡  山
倉  敷
総  社
備中高梁
石  蟹
新  見
根  雨
伯耆大山
米  子
安  来
松  江
玉造温泉
宍  道
出 雲 市

100530

102700

104145
105900

111930

114230
114900
115700
120800
95500
100600

102730
103745
104215
105930
111545
112130

114330
114930
115730
===

110530

112700

114145


121800

124100

125400
130500
105500
110600

112730
113745
114215
115830
121415
122000

124200
124700
125430
===
627
646



735


834
843
900

914
929
633
646

714

737
801

836
844
900

915
==
所要時間 2:13'00 2:10'00 11:29
表定速度 92.2km/h 94.3km/h 81.9km/h

 ○上り
列車番号 1030M 1032M 4032M







20



22






出 雲 市
宍  道
玉造温泉
松  江
安  来
米  子
伯耆大山
根  雨
新  見
石  蟹
備中高梁
総  社
倉  敷
岡  山

134300
135100
135700

141845

144115
145745

151230

153400
154500
133230
134330
135130
135745

142045
142430
144145
145815
150200
151300

153430
===

144430
145230
145830

152015


155745

161230

163400
164500
143400
144500
145300
145915

152215
152600
154215
155815
160200
161300

163430
===

1945

2001
2018
2027

2059
2123



2212
2229
1933
1946

2002
2019
2029

2102
2124

2143

2212
2233
東  京         708 718
所要時間 2:12'30 2:11'00 11:35
表定速度 92.5km/h 93.6km/h 80.9km/h
 以上を代表例とし、適宜停車駅を調節して運行、合間に普通列車及び僅かな貨物列車を挟み込む。
 副次効果として、サンライズ出雲の下り米子・松江着時刻が完全に有効時間帯に入り、上りでも「夕食を 取ってから乗る」程度の余裕を生み出すことができた。

 こうして勝手に想定したダイヤのダイヤグラムは次の通り。
やくも:赤実線(太)━━ サンライズ:青実線(太)━━
普通:白実線(細)── 貨物:白点線(細)- - - -
 (幾分全体像を掴みやすい高密度版はこちら)

 高速道路による利用減を食い止める効果こそあれど、現在競合する交通機関の需要が大きいとは 考えにくいことから需要増は然程望めないので、やくも・普通列車共に現行同等の本数設定とした。
 上りの米子着が遅れると複線区間でのやくも同士の行き違いができなくなるが、この場合は下りを 米子で待たせて新幹線接続のある上りを優先させることを原則とすべきだろう。

 また、建設費を抑制するために構造物だけ全線複線仕様としつつ、線路自体は原則単線敷設として 建設費を数億円/km安く上げる手もある。地元サービス駅の一部または全部を退避可能とし(駅構造は まさにほくほく線のそれに近い)、更に足立より下り方10kmばかりのみを複線化するかまたは下り方 数km地点に信号場を設けることで上記ダイヤを概ね維持しながら建設費を抑制し、また単線トンネルに よる走行抵抗の増加を防ぐことも可能となるのである。尤も、純然たる単線に比べれば明らかに建設費が 大きくなることは避けられないのだけれど。
 但し大筋は変わらないので、この場合のダイヤグラムは割愛する。

 なおR4000からR2500に規格を落としたとしても特段距離が縮むわけではなく、曲線半径を多少落とす 程度で地形が大幅に変わるわけでもないので、基準線形の変更による建設費の圧縮は難しいと思われる。



●各区間別所要時分変化等
 (黒字:標準時分、赤字:最速時分)
区間別変化
(括弧内キロ程は想定新線経由)
現行(※1) 想定 備考
岡山〜米子 159.1km
(142.7km)
2:10(73.4km/h)
2:04(77.0km/h)
1:2453(100.9km/h)
1:2245(103.5km/h)
 
岡山〜出雲市 220.7km
(204.3km)
3:03(72.4km/h)
2:51(77.4km/h)
2:1243(92.4km/h)
2:1000(94.3km/h)
 
東京〜米子 835.4km
(819.0km)
5:45(145.3km/h)
5:31(151.4km/h)
4:50(169.4km/h)
4:47(171.2km/h)
(※2)
東京〜出雲市 897.0km
(880.6km)
6:37(135.6km/h)
6:23(140.5km/h)
5:38(156.3km/h)
5:35(157.7km/h)
(※2)
 ※1:2008/3/15改正準拠。
 ※2:岡山乗継ぎ9分、想定側は時期を考慮して東京〜岡山3時間16分(東阪間2時間30分+山陽内300km/h)。

 東京〜米子でも、毎時1本のフリークエンシーによってどうにか航空対抗が可能になる程度だろうか。正直な所 対関東を考えるならばもう一息欲しい所なのだけれど、これでも岡山〜米子間の表定速度が100km/h台に 乗っており、新線延長53.1kmで建設費も2000億円台になろうかという状態なので、一気にこれ以上を求めるのは わざわざ新幹線規格新線を選択した理由に鑑みれば少々やり過ぎと思われる。
 対東京の区間の大半を東海道新幹線が占める以上、岡山以東での所要時分削減には限度があると考えるべき だろう。無論、新大阪までリニアが開業すれば話は別だが(実質3時間台=航空対抗可能)。


●総括
 ひとまず、線路をスーパー特急化前提としてみたら面白い結果が出た。ただこの性能では885系レベルの高速性能を 確保するのがやっとで、安定した200km/h走行は望めない。これは200km/h化の際には1500Vの制約から外れられる 交流化が必要不可欠となってしまうことを示唆しているのだろうか。それとも、単純に給電能力を強化すれば 済む話なのだろうか。地上設備ではなくインバータ入力1500Vに限度があるのだとしたら、DC1500V受電を 昇圧してからインバータに送る手もある。しかし本想定の時点で既にパンタ一基あたり1500kWという、電車用 パンタでは1500V集電の限界に近い状態になっているので、このままでは困難に思えるのだけれど……さて、実情は 如何に。
 
 ともあれ、単に在来線を改良するのみではなく、基本スラブ軌道の新線で維持費が抑えられる上に、貸付 扱いでJRの資産を圧縮できるという副次効果は馬鹿にできないものではないかと思うが、如何だろうか。この 手が使えれば、抜本改良が可能な線区も少なくないと考えられるのだけれど。
 備中神代〜生山〜根雨間の旧線については、新線を貨物運転前提とする以上少なくとも電化を維持する 必要はないが、さて果たして三セク化すべきか、バス転換すべきか。まあこの辺りは地元次第か。

 なおこの案の最大の問題点は、整備新幹線財源に頼る都合上、着工が早くとも2020年頃になってしまう ことである。まあ、未来を眺めた御伽噺の様なものと考えつつ、何かの参考にでもして戴ければ幸いである。



 念の為記しておきますが、以上は既設設備等一部の例外を除いて全て 独自に試算したものです。あくまで一個人の試案ですので、検索等で来られた方は誤解の無き様。
 なお、引用は幾らでも御自由にどうぞ。

○履歴
 立案:2007/12
 着手:2008/1/12
 新見根雨間ルート策定・特急基準時分:1/14
 新見根雨間勾配曲線図:1/15
 備中高梁新見間ルート策定・勾配曲線図・特急基準時分:1/19
 備中高梁根雨間普通基準時分:1/21
 全線普通・特急基準時分:1/22
 全線貨物:3/22
 Windia打ち込み:3/23
 全体調整・公開:3/27


参考資料:○車輌資料
      ・自筆ノート(速度種別や起動加速度、実測データ等より推定した特性曲線が主)
      ・運転理論改訂版(運転理論研究会編著、2002年)
      ・運転理論直流交流電気機関車〔第21版〕(交友社編、1997年)
      ・383系量産車の概要 『電車』1996年12月(石井康寛、1996年)
      ・ブレーキからみた在来線140km/hの可能性 鉄道総研月例発表会 要旨(長谷川泉、1999年)
      ・国鉄技第157号 鉄道に関する技術上の基準を定める省令等の解釈基準について
       (国交省鉄道局長通知、2002年)
      ・鉄道ピクトリアル86年3月号(211/113/115系引張力曲線)
      ・2006JR貨物時刻表、
       etc.
     ○ルート・線路条件
      ・日本鉄道名所7山陰線・山陽線・予讃線(小学館発行、1986年)
      ・25000分の1地形図川面市場、新見(以上2点 国土地理院、2007年)、印賀(同、2006年)
         高梁(同、2005年)、油野(同、2001年)、井倉、根雨(以上2点同、2000年)
         足立、千屋実、上石見(以上3点同、1994年)

      ・5万分の1地形図根雨(同、2003年)、新見(同、1994年)、上石見(同、1993年)
      ・20万分の1地勢図高梁(同、2006年)
      ・JR時刻表、Mapion、GoogleMap
       (以上敬称略)


※執筆中BGM:ティアオイエツォン(withered leaf)(ZUN、2003年)
        少女幻葬 〜 Necro-Fantasy(音楽CDver.)(同、2003年)
        夜が降りてくる 〜 Evening Star(音楽CDver.)(同、2004年)
        ネクロファンタジア(音楽CDver.)(同、2003年)
(C)2008 far-away(◆farawagyp.)

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