北陸新幹線金沢開業想定 Vol.2
 北陸系統への365km/h対応車輌(E5系?)投入についての話題が盛んになっていた ので、先の北海道新幹線想定ダイヤで用いた性能の車輌を こちらに用いた場合に、ダイヤや所要時分がどの程度変化するのかを算定し直してみました。

車輌  基準運転時分  運行ダイヤ  所要時分比較



●車輌
 ここでは以前の北陸新幹線想定より追加となるE5系のみに限って触れておく。
 この場合、余剰のE2系は波動用を除き上越新幹線に回すこととなる。
 ○E5系8連(併結装置無)
 基本的な部分は先の北海道新幹線用8両編成と同等だが、長くても2時間程度の利用、そして厳寒地帯は走行しない という点を考慮して多少のコストダウン仕様を想定してみる。とはいえここでそう言及する以外の変更は考慮しない。
 ←東 京                         金沢→
12 34 56 78
Mc
E52130
M'1
E52631
Mp
E52730
M2
E52830
Mk
E52535
M1s
E51630
M'p
E52731
Mc2
E52230
G指
40名 100名 85名 100名 70名68名 85名 50名
 編成定員598名(普通席530+グリーン席68)
 各々の変更点の意図は解るだろうと思われるので省略する。



●基準運転時分
 最高速度は大宮以南160km/h、大宮〜高崎間でE5系は320km/h、E2系及びE4系260km/h、高崎以北 ではE5系が365km/h、E2系300km/h、E4系260km/hとして計算上運転速度の上限は制限速度-5km/h及 びATC頭打ち速度-5km/hとした。車輌と軌道条件に固有でない他の細かな点は全て北海道新幹線想定に準ずる。
 まずはE2系使用、長野以遠への列車の場合の算定から。なお駅名黒字が停車駅、赤字が通過駅である。
東京
からの
実キロ
駅間
キロ
駅  名 駅間
最高
速度
最速達 速達 駅  名
基準時分 停車駅間
所要時分
停車駅間
平均速度
基準時分 停車駅間
所要時分
停車駅間
平均速度
下り 上り 下り 上り 下り 上り 下り 上り 下り 上り 下り 上り
0.0
3.6
31.3
67.9
89.0
108.6
127.1
150.4
168.0
192.8
226.0
255.9
285.4
322.4
361.7
395.5
414.4
454.0
3.6
27.7
36.6
21.1
19.6
18.5
23.3
17.6
24.8
33.2
29.9
29.5
37.0
39.3
33.8
18.9
39.6
東   京
上   野
大   宮
熊   谷
本庄早稲田
高   崎
安 中 榛名
軽 井 沢
佐 久 平
上   田
長   野
飯   山
上   越
糸 魚 川
新 黒 部
富   山
新 高 岡
金   沢
95
160
320

320
365










365
3'45
13'45
9'30
4'00
4'30
5'15
6'30
4'30
4'30
8'15
7'45
6'30
6'45
6'30
8'15
5'45
9'15
3'30
14'00
9'15
4'00
5'00
6'00
6'00
4'30
4'30
8'30
7'30
6'00
6'45
6'30
8'15
5'30
9'30
17'30




47'00






35'45


15'00

17'30



47'45






35'00



15'00
107.3




248.6






284.5


234.0

107.3



244.6






290.6



234.0
4'15
15'00
9'30
4'00
5'45
6'30
6'30
4'30
4'30
8'15
7'45
8'45
9'00
6'30
8'15
5'45
9'15
4'15
15'00
9'15
4'00
6'00
6'00
6'00
4'30
4'30
8'30
7'30
9'00
9'00
6'30
8'15
5'30
9'30
4'15
15'00

19'15



30'15


16'30


23'45

15'00
4'15
15'00

19'15



29'30



16'30

23'45


15'00
50.8
110.8

240.9



232.9


216.0


278.1

234.0
50.8
110.8

240.9



238.8



216.0

278.1


234.0
東   京
上   野
大   宮
熊   谷
本庄早稲田
高   崎
安 中 榛名
軽 井 沢
佐 久 平
上   田
長   野
飯   山
上   越
糸 魚 川
新 黒 部
富   山
新 高 岡
金   沢
 E2系充当の準速達列車及びE4系充当列車については、以前の試算と同一なので省略する。

 E5系充当列車の速度は大宮〜高崎間については北海道新幹線想定の際の大宮〜宇都宮間に 合わせて、高崎以北は速度向上試験の計画数値に合わせて以上の数値とした。
 曲線条件についてはカントが高崎以南155mm、高崎〜長野180mm、長野以北200mm。車体傾斜 角度は2度である。2015年頃では高崎〜長野間のスラブ打ち直しにはまだ早過ぎると思われる ので、既営業区間のカントは現状のままとした。
 長野以北でもかなりの数が存在するR4000mの曲線だが、ここでは傾斜角2度0.08Gに合わせて 敢えて頭打ち速度355km/h(計算350)で算定した。365km/hに引き上げた場合との所要時分差は30秒 以内に収まるので(運転曲線上は約18秒)、基準変更までして無理に引き上げる必要もないだろう。
 なお、R4000mで355km/hに抑えると実際に365km/h運転が可能なのは佐久平〜富山間のみだった。

 下り30‰抑速制動時の速度は単純に回生容量=定格出力となる速度を求めれば321km/hだが、一方 高速度では常用制動パターンに勾配による加速を加味すると極めて減速度が小さくなって しまう。安全を見込んで、ひとまず減速度0.25km/h/sを目安に下り30‰の制限速度は280km/hと して計算した。碓氷峠登攀時(定格出力・トンネル内)の均衡速度は242km/hとしてある。



●運行ダイヤ
 ここではE5系充当列車と新潟方面に関連する代表例のみを記載した。それ以外はダイヤグラムを以って代える。

 ○下り
列車番号 2005E 505E 605E 605C 337C








5




505






605







605



337
東   京
上   野
大   宮
熊   谷
本庄早稲田
高   崎
安 中 榛 名
軽 井 沢
佐 久 平
上   田
長   野
飯   山
上   越
糸 魚 川
新 黒 部
富   山
新 高 岡
金   沢


91730







100530




104245

105915
90000
90345
91830
92800
93200
93630
94145
94815
95245
95715
100700
101445
102115
102800
103430
104415
105000
===

92415
94015


100030




103145

104945


111500

113130
92000
92515
94115
95045
95445
100130
100800
101430
101900
102330
103315
104100
105115
110015
110645
111630
112215
===

94015
95715
101115

102500

104815
105830
110845
112000
===
93600
94130
95815
101215
101930
103000
103730
104930
105900
110915
112030
===

高崎
まで
併結

102800
||  
||  
||  
||  
||  
||  
||  
||  
||  
||  
||  
||  
94800
95330
101000
102130
102630
103345
||   
||   
||   
||   
||   
||   
||   
||   
||   
||   
||   
||   
越 後 湯 沢
新   潟
            1059 
===
1054 
1132 
東京〜金沢 所要 1:59'15 2:11'30    
表定 228.4km/h 207.1km/h
東京〜富山 所要 1:42'45 1:55'00
表定 230.9km/h 206.3km/h
東京〜長野 所要 1:05'30 1:11'45 1:44'30
表定 207.0km/h 189.0km/h 129.8km/h

 ○上り
列車番号 2004E 506E 612E 612C 338C








4




506






612







612



338
新   潟
越 後 湯 沢
            1010  922 
1001 
金   沢
新 高 岡
富   山
新 黒 部
糸 魚 川
上   越
飯   山
長   野
上   田
佐 久 平
軽 井 沢
安 中 榛 名
高   崎
本庄早稲田
熊   谷
大   宮
上   野
東   京


103545




111215







120130

122000
102045
103015
103715
104530
105200
105845
110445
111345
112215
112645
113115
113715
114315
114815
115215
120230
121630
===


90015


92530

94330




101430


103445
105045
105600
84515
85445
90145
91000
91630
92700
93600
94500
95330
95800
100230
100830
101530
102130
102530
103545
105145
===

95730
100745
101700

103615

105615
110945
112600
113200
94545
95830
100845
101800
102900
104215
104930
105715
111045
112700
===
||  
||  
||  
||  
||  
||  
||  
||  
||  
||  
||  
||  

104000

高崎
より
併結

||   
||   
||   
||   
||   
||   
||   
||   
||   
||   
||   
||   

102145
102945
103445
104545
110200
110800
金沢〜東京 所要 1:59'15 2:10'45    
表定 228.4km/h 208.3km/h
富山〜東京 所要 1:42'45 1:54'15
表定 230.9km/h 207.7km/h
長野〜東京 所要 1:06'15 1:11'00 1:46'15
表定 204.7km/h 191.0km/h 127.6km/h
 東京〜金沢間に於いて、E2系300km/h運転に比べて速達列車で17分45秒、大宮・長野・富山のみ 停車の最速達型では下り18分15秒、上り17分30秒の短縮となった。

 ダイヤグラムは次の通り。
はくたか速達・最速達:青実線(太)━━ はくたか準速達:紫実線(太)━━
E2系とき:赤実線(太)━━ 東北系統:黄実線(細)──
Maxあさま+上越系統:緑実線(細)── 単独上越系統:白実線(細)──
回送:白破線(細)─ ─  
 速達列車の所要時分が変わったのみで概要は大筋で以前の通り。
 但し、高崎の配線を活かして高崎停車速達列車と緩行列車の間の待避を設定する、本来高崎停車の 準速達ときは最速達はくたかが後に続く場合高崎通過としたなど、細部の変更箇所はかなりの数に上る。



●所要時分比較
 現行、金沢開業300km/h運転、金沢開業365km/h運転、航空利用時の4ケースで比較する。
 (黒字:標準時分、赤字:最速時分)
個別変更点 区間別変化 備考
東京
〜富山
東京
〜金沢
東京
〜福井(※)
現行(上越新幹線+はくたか) 3:16(117.8km/h)
3:11(120.8km/h)
3:53(114.4km/h)
3:48(116.9km/h)
3:23(150.2km/h)
3:22(151.0km/h)
 
384.7km 444.1km 508.2km
北陸新幹線金沢開業(300km/h) 2:1045(181.5km/h)
1:5900(199.4km/h)
2:2915(182.5km/h)
2:1730(198.1km/h)
3:22(157.6km/h)
3:06(171.2km/h)
金沢での新在乗り継ぎ時分は8分
395.5km 454.0km 530.7km
北陸新幹線金沢開業(365km/h) 1:5500(206.3km/h)
1:4245(230.9km/h)
2:1130(207.1km/h)
1:5915(228.4km/h)
3:04(173.1km/h)
2:48(189.5km/h)
金沢での新在乗り継ぎ時分は8分
395.5km 454.0km 530.7km
航空利用 2:40 3:00 3:20 中心地対中心地・公共交通機関
都心〜羽田 出発は60分で計算
 ※:現行は西回り、金沢開業は東回りルート。

 東京〜富山の航空路線は特殊事情がない限りほぼ確実に消滅し、東京〜小松についても金沢方面への 需要は殆どが新幹線に移行するだろう。富山空港が松本空港同様になるのは時間の問題といえよう。能登便 にはおそらく影響が生じない。
 但し、金沢以西については300km/h運転でも需要の殆どが新幹線側に移るとみられ、金沢開業段階で365km/hに 引き上げた場合にそのことによって顕著な効果が出るのは福井周辺のみと推測できる。
 利便性はともかく、こと需要の占有率について見る限りでは365km/h化の必要性は小さい。遠距離でより 速達性が求められる東北・北海道系統への365km/h対応車(E5・E6系?)が十分に増備されるか、福井若しくは 敦賀開業まで待って高速化する方が効率的ではないだろうか。

 従って、軌道は将来の超高速運転を視野に入れた構造にしつつ、車輌は必要十分な程度に留めておく。金沢 開業時点ではそれで十分であろう、とこの比較から結論付けられる。
 これは決して高速化そのものを否定するものではなく、あくまで地上設備の一部(架線張力やホーム防護等)と 車輌側のコストの問題に過ぎないので、JR西日本が負担するなり東日本に相応の余裕が生じるなりすれば 速度向上には何ら問題無いことも付記しておく。



 念の為記しておきますが、以上は既設設備等一部の例外を除いて全て公表された計画を下敷きとして 独自に試算したものです。あくまで一個人の試案ですので、検索等で来られた方は誤解の無き様。
 なお、引用は幾らでも御自由にどうぞ。

○履歴
 着手:2005/6/19
 基準所要時分:6/26
 WinDIA修正打ち込み:6/27
 全体調整・公開:6/27

 修正(新高岡駅位置確定):2006/5/25


参考資料:○ルート・線路条件・所要時分比較参考
      北陸新幹線関連広報・報道、JR時刻表、Mapion、ANA時刻表、JAL時刻表、
      世界の高速鉄道(佐藤芳彦、1998年)、
      新幹線はもっと速くできる(川島令三、1999年)
      未来を拓く 北陸新幹線(富山県北陸新幹線対策連絡協議会)
      饋電区分所位置に ついては探検発見:JR東日本 新軽井沢き電区分所(なりたま通信所)より
      長野〜富山間構造物位置に ついては整備新幹線の今がわかる ページ内資料も使用
     ○地形条件・現状建造物状況
      日本地図帳(昭文社、1983年)、Mapion
     ○車輌資料
      自筆ノート、新幹線はもっと速くできる(川島令三、1999年)、
      鉄道ダイヤ情報95年5月号、
      及び北海道新幹線想定ダイヤ(拙著)
      (以上敬称略)

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