以前、E2系での300km/h運転と対応車輌投入による365km/h運転について
書いてみましたが、近頃更に別の可能性が見えてきたので、改めて算定し直してみることにしました。 上越新幹線並びに両線ダイヤ案及び検討を追加(2008/3/22)。 |
←東
京 金沢→
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編成定員589名(普通席538+グリーン席51) 性能面は、320km/hなら十分であろうことからE954の8N相当とする。起動加速度1.7km/h/s、速度 種別U21、明かり15‰登攀均衡289km/h、明かり平坦線均衡速度388km/h、隧道30‰登攀均衡200km/h。 車体傾斜は広報通り1.5度。 ○E4系1000番代8連(併結装置有、50/60Hz対応) 客室設備に大きな変化は生じないものとする。 |
←東
京 越後湯沢・新潟→ ←東 京 軽井沢・長野→
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設備は現行E4系に同じく、編成定員817名(普通席763+グリーン席54)、2編成併結時定員1634名。 北陸系統あさま運用、上越系統運用の両用で東京口にて併結、高崎にて分割併合するものと考えておく。 また性能面については、現状でも既に中速域での粘着に然程余裕がないと考えられ、MT比1:1のままでは 出力を大きく上げるには難がある。従ってとりあえず、起動加速度及び定出力域での出力は同程度の ままに、定出力域を高速側に拡大して加速度の低下を抑えるのみに止めた。 それでも定出力域を260km/hまで維持すればS52程度は確保できる見込みが立つのだから、面白いものなの だが。また、低速から高速まで幅広くトルクを維持できる電動機であれば、実質的により高出力のものの 出力を抑えて使用するのとほぼ同じことなので、これは結構な贅沢でもある。 起動加速度1.65km/h/s、速度種別S52、明かり15‰登攀均衡223km/h、隧道15‰登攀均衡207km/h、明かり12‰登攀 均衡241km/h、隧道12‰登攀均衡216km/h、明かり平坦線均衡速度300km/h、隧道平坦線均衡速度275km/h、隧道30‰登攀 均衡149km/h。車体傾斜なし。 因みに6M2T化という選択も考えてはみたが、どうしてもスペースの都合上2・4・6号車の車端部客席を削ることに なってしまい、その場合は特に車椅子対応で厳しいことになってしまうので、残念ながらこれは没とした。 E2系は現状ままなので略す。 |
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下り30‰抑速制動時の速度は、回生失効非常時を考慮して現状同様の210km/hと
した。この結果、E5系では降坂より登攀の方が速いという事態が発生してしまった。これを
解消するためには機械ブレーキの容量を増さなければならないのだが、そんな真似をしたら
バネ下重量が増えるのは明らかなので、ひとまず210km/hに抑えておくこととする。 登攀時の出力については、よくよく考えてみれば大した時間でもないので今回は定格ではなく 全出力での運転曲線を以って計算した。 続いて、E2系について。これについては275km/hの場合と、速度制限が解除されない 場合の260km/h止まりの両方を計算した。この2例を共に示しておく。 ・275km/h |
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・260km/h |
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諸々の性能設定は全て現状通り。 最後に、E4系1000番代について。前述の通り、東京〜高崎間では0番代の数値を用いる。 |
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下り30‰抑速制動時の速度は、E4系の場合出力差を考慮して180km/hとした。 なお緩行の併結時には、併結相手の都合上高崎以南での全駅停車が求められる。 以上でほぼ対応できるだろう。 なおいずれの例も、特に急勾配区間で多くの余裕時分を取っており(場合によっては1割超)、ダイヤの 安定性を捨てて最短到達時分を求めるのであれば7〜12分程度縮めることも可能である。 |
○比較 さて、各例が出揃った所で所要時分差を視覚化してみよう。上の例について東京を基準点として、下りは左から 最速達、速達、準速達、緩行の順に、上りは逆順にダイヤグラムに落としたのが下図である。 |
E5:水実線── | E2(275km/h):桃実線── |
E2(260km/h):緑実線── | E4-1000:白実線── |
見ての通り、長野以南ではE2系275km/hとE4系260km/hの間に登坂性能以外による差が殆ど
付かず、Maxの260km/h化が可能なら最早短距離運用にE2系の性能は不要となってしまう。 仮に比較する区間を金沢まで延ばしたとて、E2系とE4系の差よりもE2系同士での275km/hと260km/hの 差の方が大きくなる場合すら存在する始末である。これでは、260km/h縛りが解除されない限りは 次期投入車をMaxにしてしまう方が合理的といえる。 速度制限を解除した上でE5系ともなれば流石に効果は大きいが、これが2015年頃に北陸系統で全てを 占める状況になるとは考え辛い。次期Maxが、北陸投入を視野に入れて製造されると見る余地は十分に あるだろう。 |
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諸々の性能設定は全て現状通り。 そして、E4系について。 |
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以上の組み合わせでそこそこ対応できるだろう。 |
はくたか速達・最速達(E5):青実線(太)━━ | はくたか準速達(E5):紫実線(太)━━ |
とき速達・最速達(E2):赤実線(太)━━ | とき準速達(E4):白実線(細)── |
Maxあさま+Maxたにがわ(E4):緑実線(細)── | 多客臨・スキー臨(E4):白破線(細)─ ─ |
回送:薄灰一点鎖線(細)─ - ― | 東北系統:黄実線(細)── |
はくたか速達・最速達(E5):青実線(太)━━ | はくたか準速達(E2):紫実線(細)── |
とき速達・最速達(E2):赤実線(太)━━ | とき準速達(E4):白実線(細)── |
Maxあさま+Maxたにがわ(E4):緑実線(細)── | 多客臨・スキー臨(E4):白破線(細)─ ─ |
回送:薄灰一点鎖線(細)─ - ― | 東北系統:黄実線(細)── |
この例では所要時分差が大きくなり、列車によって乗客の疎密が分かれやすいのであまり好ましい
ものとはいえない。 ○3:E2&E4-1000(260km/h) 東京〜金沢直通23往復設定、北陸最高260km/h 最低運用数 E2-0:15運用+予備 E4-1000:7運用+予備 全車E2で賄うことも不可能ではないものの、大宮以南の容量や予備を考えると短距離はE4-1000として しまうほうが無難といえる。 ダイヤグラムは次の通り。 |
はくたか速達・最速達(E2):青実線(太)━━ | はくたか準速達(E2):紫実線(太)━━ |
とき速達・最速達(E2):赤実線(太)━━ | とき準速達(E4):白実線(細)── |
Maxあさま+Maxたにがわ(E4):緑実線(細)── | 多客臨・スキー臨(E4):白破線(細)─ ─ |
回送:薄灰一点鎖線(細)─ - ― | 東北系統:黄実線(細)── |
はくたか速達・最速達(E4):青実線(太)━━ | はくたか準速達(E4):紫実線(太)━━ |
とき速達・最速達(E2):赤実線(太)━━ | とき準速達(E4):白実線(細)── |
Maxあさま+Maxたにがわ(E4):緑実線(細)── | 多客臨・スキー臨(E4):白破線(細)─ ─ |
回送:薄灰一点鎖線(細)─ - ― | 東北系統:黄実線(細)── |
なおこれらをそのまま走らせると、東京駅の4線がパンクする可能性がある。臨時予定スジも含めているので 通常時にどれだけ必要かはともかく、繁忙期には上野回送整備や上野発着が必要となるかも知れないのは 問題である。また、東京22・23番線間への片渡り設置が望ましい。 因みに本想定に於ける大宮以南の最大設定本数は、東北系統9本/時(速達用回送枠1を含む)、上越北陸 系統5本/時の計14本/時+回送となる。 また、例3以外では高崎発着順を入れ替えることで、あさまをE2系0代J編成、たにがわをE3系とすることが 可能である。この場合、ただ転配するだけでは東北系統の盛岡以南での輸送力不足が危惧されるので、何らかの 手段によりR1〜16編成からも新幹線上のみで運用できるものを手当する必要があると思われる。 それが為された場合にはこのような具合となる。 ○E2系0番代10連(併結装置有、50/60Hz対応)&E3系6連 客室設備に大きな変化は生じないものとする。 |
←東
京 軽井沢・長野→ ←東 京 越後湯沢・新潟→
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現行に同じく、E2系編成定員814名(普通席763+グリーン席51)、E3系編成定員338名(普通
席315+グリーン席23)、併結時定員1152名(普通席1078+グリーン席74)。 高崎以北に於ける一列車あたりの定員が対200系ですら半分弱となってしまい、繁忙期というだけでも 輸送力に不安を抱えてしまうレベルである。繁忙期にはE4系で相応に増発するというのであれば ある程度は対応できるだろうが、それにしてもここまで少なくなるのは問題だろう。 この事と前述の秋田新幹線会社所有問題とによりこの条件で想定ダイヤを組みはしなかった が、可能性としては考えられるのでとりあえず掲げておく。 ……しかし、仮にこうするとなれば、こまちのロゴをときマークに貼り替えたりすることに なるのだろうか。 |
●所要時分比較 現行、例1〜4、航空利用時の6ケースで比較する。 なお、320km/hでなければ然程インパクトのある数字とはならないので、例3・4に於いては最終速達以外に 上野通過列車を設定していない。 (黒字:平均時分、赤字:最速時分) |
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※:現行は西回り、金沢開業は東回りルート。 いずれの例に近い形が実現するにせよ、金沢開業によって羽田〜富山の航空路線は特殊事情がない限り消滅または それに近い状態となり、羽田〜小松についても金沢方面への需要は殆どが新幹線に移行するだろう。寧ろ、成田便 就航によって維持を図る可能性も考えられる。また富山空港の国内旅客が、松本空港同様にまで至るかどうかは さておき、少なくとも花巻空港や山形空港等と同様になるのは時間の問題といえよう。能登空港にはおそらく 影響が生じない。 加えて、320km/h運転であっても停車駅を相当抑えなければ275km/h以下と大差が生じない。従って早期に北陸系統 にもE5系を投入する必要性はさほど大きなものではなく、どれだけ徹底して需要を奪いまた喚起するかという 視点から是非を判断することになると思われる。 とりあえず、航空路線の代替という観点からは十分なものと判断できるだろう。 また、上越系統についても同様の比較を取る。 新潟〜酒田間については、新潟県庁の羽越本線高速化検討委員会報告書より各列車10分短縮として扱った。 (黒字:平均時分、赤字:最速時分) |
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いなほ接続列車の多くにE2系を充てたため、東京対庄内については短縮効果がはっきり出たが、反面
東京対新潟についての効果は限定的なものに留まった。E2系充当列車以外は速くなっているわけでも
ないので、寧ろ当然の結果が出たものといえよう。 しかし、対庄内は相変わらず航空対抗でどうも物足りないが……やはり、鉄道利用へ大きくシフトさせる為には 抜本的な解決策が必要ということを示しているのだろうか。航空の羽田発着枠は、できることなら航空ならではの 路線に集中させるほうが良いと思うのだけれども。 ひとまず今回は、特段不便とならないように取り計らうこともできる例ということで示してみたものである。 |
念の為記しておきますが、以上は既設設備等一部の例外を除いて全て公表された計画を下敷きとして
独自に試算したものです。あくまで一個人の試案ですので、検索等で来られた方は誤解の無き様。 なお、引用は幾らでも御自由にどうぞ。 ○履歴 立案・着手:2007/8/28 配転情報整理:8/29 基準所要時分:10/14 以上を調整・公開:10/14 WinDIA打ち込み:2008/3/13 北陸系統所要時分比較:3/15 上越系統所要時分比較:3/21 全体調整・公開:3/22 参考資料:○ルート・線路条件等参考 ・日本鉄道名所2東北線・奥羽線・羽越線(小学館、1986年)、 ・日本鉄道名所5中央線・上越線・信越線(小学館、1986年)、 ・日本鉄道名所6北陸線・関西線・紀勢線(小学館、1987年)、 ・北陸新幹線工事の 概要(日本鉄道建設業協会)、 ・北陸新幹線建設局担当範囲線路縦断概要図(某商業サイトにあったが原出典不明) ・北陸新幹線関連広報・報道・入札発注資料等(駅位置・ルート・仕様等)、 ・世界の高速鉄道(佐藤芳彦、1998年)、 ・新幹線はもっと速くできる(川島令三、1999年) ・探検発見:JR東日本 新軽井沢き電区分所(なりたま 通信所)(饋電区分所位置について)、 ・整備新幹線の今がわかる ページ(長野〜富山間トンネルの位置及び距離の決め打ちに使用) ・交通〔軌道系編〕(交通研究会、1999年)(当時建設線の線路縦断図・平面図) ・昭50環告46、新幹線鉄道騒音に係る環境基準について(環境庁告示、1975年)(環境基準測定方法) ・羽越本線の高速化と地域活性化に 関する検討委員会報告書 3 高速化改良の検討 (新潟県交通政策局交通政策課、2007年) ○地形条件・現状建造物状況 ・日本地図帳(昭文社、1983年)、 ・Mapion ○ダイヤ資料 ・JR時刻表、 ・ANA時刻表2008年4〜5月号、 ・JAL時刻表2008年4/1〜5/6号、 ・庄内交通サイト空港リムジンバス時刻、 ○車輌資料・時刻等 ・小型軽量・高出力 主回路機器の開発 『JR EAST Technical Review』No.14(安井義隆・古田良介、2005年)、 ・東北・上越新幹線用E4系新幹線電車の開発 『JREA』Vol.41 No.1(佐藤芳彦、1998年) ・高感度交流き電保護継電器の 開発 『JR EAST Technical Review』No.2(井桁敏明・安藤政人・尋田伸幸、2003年)、 ・運転理論改訂版(運転理論研究会編著、2002年)、 ・世界の高速鉄道(佐藤芳彦、1998年)、 ・新幹線テクノロジー(同、2004年)、 ・新幹線はもっと速くできる(川島令三、1999年)、 ・鉄道ダイヤ情報95年5月号、 ・鉄道ジャーナル99年3月号、 ・自筆ノート、 ・北海道新幹線想定ダイヤ(拙著)、 ・etc. (以上敬称略) ※執筆中BGM:Moon Base(桜庭統、2006年) 月時計 〜 ルナ・ダイアル(ZUN、2002年) 天空のグリニッジ(同、2006年) (C)2007-2008 far-away(◆farawagyp.)
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