先の北陸新幹線ダイヤ案及び北海道新幹線ダイヤ案による東京〜高崎間の
空きスジを元に、上越方面についても若干の速度向上を考慮してみました。 とはいえ、こちらは元々各駅停車でもさほど運転時間が長くないこと、季節による旅客数の 変動が著しいことからMaxを除くのは適当ではありません。そこで、200系に比べ多少は加速余力が あり、ノーズ形状(断面積変化曲線)から多少の速度向上には余裕があること、そして高崎〜長岡間の 駅部を除く殆どがトンネル内であることから、E4系を260km/hまで引き上げた場合の数字を検討 しました。 なお、速達列車については北陸新幹線仕様のE2系を流用して275km/h運転とすることで現状よりも 若干の所要時分減を図っています。 |
●車輌 ●基準運転時分 ●運行ダイヤ ●所要時分比較 |
●車輌 まずは新潟速達用としてE2系N編成から。この場合の最高速度は275km/hである。 編成図は以下の通り。 ○E2系8連(併結装置無) ←東 京 新潟→
何の変哲もない、現行N編成そのものである。 ○E4系8連 続いて、上越・北陸短区間運行用としてE4系の8連を。当然北陸運用充当は碓氷峠対応のP51編成 以降であり、そして軽井沢以西へは50/60Hz対応のP81編成以降が必須である。従って、上越系統運用へは それ以前の編成を優先的に割り振ることとなる。 |
←東
京 軽井沢・長野→ ←東 京 越後湯沢・新潟→ | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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編成定員817名(普通席763+グリーン席54)、2編成併結時定員1634名。 やはり、現行P編成そのものである。上に記した通り、東京口併結で高崎にて分割併合するものと 上越系統単独運用が基本となるだろうか。 上越系統単独運用の場合、冬季には越後湯沢またはガーラ湯沢まで16連で運行することも考えられる。 |
●基準運転時分 最高速度は大宮以南160km/h、大宮〜高崎間で260km/h、高崎以北ではE2系が300km/h、E4系が260km/hとして 計算上運転速度の上限は制限速度-5km/h及びATC頭打ち速度-5km/hとした。細かな点は全て北陸新幹線想定に準ずる。 まずはE2系使用、大宮のみ及び大宮・長岡のみ停車の列車の算定から。駅名黒字が停車駅、赤字が通過駅。 |
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続いて、E4系使用の列車について。 |
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算定速度をこれだけ引き上げると結構な所要時分短縮が実現できた。 越後湯沢到着時には余裕時分を30秒余計に付けている(30秒→1分0秒)。 また、燕三条通過→新潟間でE2系の方が所要時分が長くなっているのは原則無停車で余裕時分を 取れる区間が少ないために新潟到着時に30秒余計に付けているためである。 越後湯沢以北である程度の騒音対策が必要になることも付け加えておく。 カントは現状通り155mm。DS-ATCによる信号段の細分化によって中山トンネル内では180km/h、長岡付近 では235km/hまで曲線通過速度を引き上げられた。高崎〜浦佐間での連続勾配は新幹線本線 規格内の為、下り勾配に於ける速度制限は一切考慮していない。車種毎の最高速度と曲線通過速度に 抵触しない範囲で、速度を最大限引き上げてある。 |
●運行ダイヤ 基本パターンがあるものの各列車は各時間帯の状況に応じてまちまちなので、ここでは 基本パターンを踏襲する代表例のみを記載した。それ以外はダイヤグラムを以って代える。 ○下り
○上り
また、冬季の混雑を考慮して越後湯沢は1分30秒停車とした。 ダイヤグラムは次の通り。 |
はくたか速達・最速達:青実線(太)━━ | はくたか準速達:紫実線(太)━━ |
E2系とき:赤実線(太)━━ | 東北系統:黄実線(細)── |
Maxあさま+上越系統:緑実線(細)── | 単独上越系統:白実線(細)── |
回送:白破線(細)─ ─ |
一旦3本/時のパターンダイヤで組んだ後に、速達列車を挿入して現行ダイヤを元に適宜間引いて
停車駅を調節した結果がこれである。北陸連絡需要がほぼ消滅する分越後湯沢への速達需要が若干減少すると
考えられるので、時間帯によっては高崎以南で北陸系統と併結する列車も新潟まで入れている。 なお、基準時分算定でこそ通過列車を考慮したものの燕三条は基本的に停車させる駅とした。 |
●所要時分等比較 現行、上記試算のみ、上記試算+羽越本線高速化、高速バス利用時、航空利用時の5ケースで比較する。 |
個別変更点 | 区間別変化 | 備考 | ||||
東京 〜越後湯沢 |
東京 〜長岡 |
東京 〜新潟 |
東京 〜酒田(※1) | |||
182.7km | 245.1km | 300.8km | 469.0km | |||
現行 | 平均 | 1:25 (129.0km/h) |
1:47 (137.4km/h) |
2:10 (138.8km/h) |
4:27 (105.4km/h) |
(※2) |
最短 | 1:06 (166.1km/h) |
1:33 (158.1km/h) |
1:37 (186.1km/h) |
3:55 (119.7km/h) | ||
料金計 | 12980円 | 17400円 | 20540円 | 22000円 | ||
上記試算 +在来線内現行同等 | 平均 | 1:1925 (138.0km/h) |
1:3814 (149.7km/h) |
1:5835 (152.2km/h) |
4:06 (114.4km/h) |
新潟での新在乗り継ぎ時分は8分 |
最短 | 1:0800 (161.2km/h) |
1:1645 (191.6km/h) |
1:2930 (201.7km/h) |
3:43 (126.2km/h) | ||
上記試算 +在来線内振り子化 新潟〜村上間130km/h化 | 平均 | 1:1925 (138.0km/h) |
1:3814 (149.7km/h) |
1:5835 (152.2km/h) |
3:45 (125.1km/h) |
新潟での新在乗り継ぎ時分は8分 |
最短 | 1:0800 (161.2km/h) |
1:1645 (191.6km/h) |
1:2930 (201.7km/h) |
3:27 (135.9km/h) | ||
高速バス利用 | 平均 | 3:00 | 4:18 | 5:20 | 8:27 | 中心地対中心地 |
往復運賃 | 5400円 | 7830円 | 9450円 | 13950円 | ||
航空利用 | 標準 | ――― | ――― | ――― | 2:10 | 都心〜羽田出発60分、 庄内空港到着〜酒田市内50分で計算 (※3) |
往復運賃 | ――― | ――― | ――― | 31240円(特割7) 28240円(旅割) |
※1:新潟〜酒田間の計算対象は定期列車のみ。 ※2:料金は東京〜酒田が庄内往復きっぷ、他は正規料金。 ※3:運賃は京急(品川〜羽田空港)及び庄内空港リムジンバス運賃(空港〜庄交BT)を含む。 とまあ、平均値で比較すると満遍無く1割弱の時短が図れるわけである。 対庄内地域の航空対抗として見ると、所要時分はまだまだといった感がある。しかし新幹線内の 速度向上でこれ以上短縮しようとしても、300km/hまで引き上げてもせいぜい4〜5分しか短縮 されず、360km/hまでしてもなお大宮〜新潟間(269.5kmある)で50分を切ることは難しい。仮令新宿〜大宮間を 建設したとて、東京都心〜新潟間で60分を切るという目標は現実的な範疇ではない。新幹線路線として 距離が短過ぎるが故に、速度向上による短縮効果が小さ過ぎるのである。 対庄内での所要時分を考える限り、まずは現時点で既に所要時分の半分以上を占める上に高速化の余地がある 白新線・羽越本線の高速化を図るべきだろう。 一方、料金について目を向けると高速バスとの大きな料金差は相当な廉売をしなければ利便性で 覆せるものではない。従って、消極的だが当面は無視するのが妥当だろう。 航空相手では既に十分な価格差があるので、これ以上の廉売は得策ではない。そもそも、おはよう 庄内往復きっぷの役割の一つである「利用の少ない列車に誘導する」という効果を損ねることにも なりかねないのである。 結局需要喚起を伴わない限りは、上越新幹線それ自体にできることは限られている。他方面 からのお下がりを流用しつつその範囲で速度向上と、細かな利便性の改善を行うのが堅実な道と言える だろうか。まさに役不足、潜在能力はあっても取り巻く環境がその発揮を許さないのだ。 ……あくまで「旅客輸送に限れば」だが。 あまり面白くない結論になってしまったが、ひとまずこれにて結びとする。 |
念の為記しておきますが、以上は既設設備等一部の例外を除いて全て公表された計画を下敷きとして
独自に試算したものです。あくまで一個人の試案ですので、検索等で来られた方は誤解の無き様。 なお、引用は幾らでも御自由にどうぞ。 ○履歴 着手:2006/4/14 基準所要時分:4/20 WinDIA打ち込み:4/28 比較:4/29 全体調整・公開:4/30 参考資料:○ルート・線路条件等 世界の高速鉄道(佐藤芳彦、1998年)、新幹線はもっと速くできる(川島令三、1999年)、 日本鉄道名所2東北線・奥羽線・羽越線(小学館、1986年)、 北陸新幹線関連広報・報道、JR時刻表、Mapion、鉄道ファン2000年3月号、 庄内交通株式会社サイト内リムジンバス案内、 2万5千分の1地形図高崎、下室田、伊香保、水上、土樽、越後湯沢、十日町 (以上7点国土地理院、2002年)、 前橋、金井、上野中山(以上3点同、1997年)、茂倉岳(同、1993年)、 猿ヶ京、五日町、小出、長岡(以上4点同、2003年)、塩沢(同、2001年)、 小平尾、小平谷、片貝(以上3点同、2006年) ○現状ダイヤ資料 JR時刻表2006年3月号及び過去数年分、ANA時刻表2006年6月号、 2006年3月改正版上越・長野新幹線時刻表(JR東日本無料配布) ○車輌資料 自筆ノート、世界の高速鉄道(佐藤芳彦、1998年)、 新幹線はもっと速くできる(川島令三、1999年)、 鉄道ジャーナル97年6月号及び99年7月号、鉄道ダイヤ情報95年5月号、etc. 並びに北海道新幹線想定ダイヤ及び北陸新幹線想定ダイヤ(拙著) (以上敬称略) (C)2006 far-away(◆farawagyp.)
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