Train On Train実施例
 Train On Train、所謂「コキごと」発明の特許出願の出願公開である、特開2005-262914「貨物 列車及び列車搬入搬出方法」を読み込んて手を動かしてみたところ、モード変換で相当な高効率を確保できることが 確認できたので、それを一つ書いてみることにしました。
 なお、青函間での採用を前提に図を描いているので需要の小さい区間では過剰設備となるかも しれません。が、あくまで実施「例」ですから、一箇所で使えそうなら良いのですそんな事。
 でも請求項によっては進歩性違反喰らわないかな、この出願。特実審査基準では純粋ネット文献が 無視に等しい扱いされているから、新規性はどうにかなるのだろうけれど。

概要     搬入出手順



●概要
 特開2005-262914「貨物列車及び列車搬入搬出方法」の一解釈として、特に第2の実施例(0056〜0076段落)を参考に 以下のようなものを考えてみた。
 第3の実施例は厳密な停止位置決めが必要なこと、余計な車輌を要することから迅速な作業が要求される青函間に 於いては問題があると判断して採用を見送った。

・搬入出線単線例
 用地は若干必要になるが、肝心の搬入出線とは干渉せずに機回しが可能なので、結果として効率的な運用が 可能となる。また、異常時には機回し線を側線として利用することも可能である。
 着雪、着氷及び積雪の問題は、道南程度の気候であればトラバーサ付近をスノーシェッドで覆うこと、及びヒータを 付加すること等によりほぼ解決できるのではないだろうか。

 なお青函間では26往復以上の搬入出が必要なことから、現実的には更に次のような改良を加える必要があると 考えられる。

・搬入出線双単線例
標準軌動力車(左) 標準軌動力車(右) 狭軌機関車
標準軌用貨車 狭軌コキ(20m級) コキ積載状態
 青線部:標準軌、赤線部:狭軌、緑地部:トラバーサ、茶斜線部:トラバーサ可動範囲。

 事実上の入換線という性質上、複線ではなく双単線とするのが効率の面で望ましいだろう。端部に挿入する渡り線は 凍結防止さえしておけばシーサスでも十分だろうが、信頼性に問題があると考えるのであれば片渡り×2でも良い。




●搬入出手順
 双単線であっても搬入出手順は同様なので、以下に記す手順説明では単線の例のみで済ませる。
 まず、標準軌の搬入出線上に標準軌用貨車を停めておく。この際、動力車は切り離してトラバーサと干渉しない 位置まで退避させ、トラバーサは狭軌側の位置に置いておく。

 そこへコキを連ねた狭軌貨物列車が入線。

 標準軌用貨車の床面にある狭軌軌道上を走って……。

 トラバーサ上の停車目標で停車。

 狭軌機関車を切り離し、トラバーサ外へ退避。コキのブレーキが自動ブレーキによるものだけでは 不安なら、駐車ブレーキの設置も一手である。コキ側に施工すると対象数が膨大になってしまう ので、標準軌用貨車の側に何らかの装置を用意する方が無難だろう。

 トラバーサを動かし、標準軌が接続される。

 標準軌動力車を連結。標準軌用貨車に連結することはもとより当然だが、コキとの間についても 転動防止策として連結することを検討しても良いだろう。

 種々の確認後、発車。

 標準軌を進むTOT列車を見送りながら、狭軌機関車は機回し線を移動する。



 トラバーサと干渉しない位置へ移動する。

 標準軌方本線からTOT列車が入線。



 停車目標で停車。

 今度は標準軌動力車を切り離し、トラバーサ外へ退避。

 トラバーサを動かし、狭軌が接続される。

 狭軌機関車とコキとを連結。

 確認後、狭軌貨物列車が発車。



 そして最初に戻る。

 以上を動画GIFにしたものはこちら。

 なお公開特許公報中で触れられていない問題として、搬入出に於いて各標準軌用貨車間の間隙をコキの車輪が 通過する際に、どうやって軌道を確保するかという点が挙げられる。
 十分な可撓性を確保した渡り板を常時設置しておくのが効率的ではあるが、安定性を考慮すれば停車時にのみ渡り板を 用意することも一手ではある。但しその場合、搬入出に要する時間がより長くなるという問題点が生じてしまう。

 またコキを密自連にするわけにも行かないので、狭軌貨物列車の停車時には圧縮しておかなければ、標準軌上の 走行中に変位が生じる恐れがある。これを防ぐために、停車目標からの多少のずれは容認して(とは いっても1m程度)標準軌動力車の連結時にそのずれを推進運転で修正するといった手法が可能となること からも(この場合コキの制動緩解が必要になるが)、標準軌動力車とコキの間をも連結することは有効であろう。

(2008.3.1追記)
 指摘を見掛けたので修正をば。
 更に架線の都合上、TOT車輌上を走行する狭軌機関車はDLであることが求められ、かつTOT車輌の強度の都合上 重くともDE10程度の質量であることが求められるだろう。狭軌機関車が牽いて出発する際にはTOT車輌上を走行することも ないだろうが、反面TOT車輌上に積み込む際には、入換用DLで動かしてやらなければならないわけである。
 従ってTOT車輌に積み込む際には入換用DLによって牽引または推進運転を行うことが必要となるが、上記の図は あくまで概念図なので必要に応じて適宜修正して戴きたい。

 TOT試験車の現物は、まだ基礎実験レベルのものでしかないと感じさせるに十分なほど簡易な構造に 見えたけれども……まあ、10年くらいで実用化できれば御の字かと。



 念の為記しておきますが、以上は公開特許広報を参考にしつつも、それ以外は例によって既設設備等一部の例外を 除いて全て公表された計画を下敷きとして独自に試算したものです。あくまで関係各所とは無縁の一個人の解釈 及び試案ですので、検索等で来られた方は誤解の無き様。
 当然ながら、引用は御自由にどうぞ。

○履歴
 立案:2006/4/27
 着手:4/30
 TOT実施例付図作成:11/12
 TOT実施例解説作成・動画GIFのみ先行公開:11/17
 TOT各例基準運転時分:12/21
 全体調整・公開:2007/10/3
 修正(解説末尾の追記部):2008/3/1


参考資料:○車輌・コンテナ等資料
      ・特開2005-262914(JP,A)「貨物列車及び列車搬入搬出方法」(出願人:JR北海道)
      ・世界の高速鉄道(佐藤芳彦、1998年)
      ・新幹線テクノロジー(同、2004年)
      ・インバータ電車制御概論(飯田秀樹・加我敦、2003年)
      ・新幹線はもっと速くできる(川島令三、1999年)
      ・2006JR貨物時刻表、
      ・モーダルシフトを支える 機関車・貨物輸送システム
       東芝レビュー Vol.58 No.9(長瀬光範・沼崎光浩、2003年)

      ・スーパー レールカーゴの開発
       電気学会誌 Vol.125 No.5(淺倉康二・中川哲朗、2005年)

      ・Le Shuttle, the locomotive from Eurotunnel
       Leonardo Electronic Journal of Practices and Technologies Issue 1(Gabriel MOISA、2002年)

      ・路面電車とLRTを考える館内「日本 のLRV画像・図・諸元」、
      ・国鉄技第157号 鉄道に関する技術上の基準を定める省令等の解釈基準について
       (国交省鉄道局長通知、2002年)
      ・北海道新幹線想定ダイヤ及び北陸新幹線想定ダイヤ(拙著)、自筆ノート、
       etc.
     ○ルート・線路条件等
      ・日本鉄道名所1函館線・根室線・宗谷線(小学館発行、1987年)
      ・日本鉄道名所2東北線・奥羽線・羽越線(小学館発行、1986年)
      ・5万分の1地形図蟹田、木古内、七飯(以上3点 国土地理院、2005年)
      ・北海道新幹線関連広報・報道、
      ・2006JR貨物時刻表、
      ・JR貨物本社サイト、同北海道支社サイト
      (以上敬称略)


※執筆中BGM:多重化する背反(桜庭統、2006年)
        ラクトガール 〜 少女密室(音楽CDver.)(ZUN、2002年)
        ネクロファンタジア(音楽CDver.)(同、2003年)
        幻視の夜 〜 Ghostly Eyes(音楽CDver.)(同、2003年)
(C)2006-2008 far-away(◆farawagyp.)

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