以前公開した北海道新幹線予想ダイヤと密接に
関わる問題です。
わざわざ275km/hに落としたり、新函館止まりのはやてをわざと準速達列車に近付けたりしたのは
これが原因で、速度が大きく異なる列車群を63.0kmに渡って待避設備の無い区間に於いてどうやって
共存させるか、という難題への回答の一部を兼ねていました。
ここでは、4本/時以内であれば事実上問題ないにも関わらず敢えて輸送力確保の為に5本/時以上の列車を
通すケースを4通り用意して、新幹線車輌及び軌道を除く条件を個別に想定してから考えてみることとします。
なお、幸いにして防風壁を設置するとの事なので、新幹線列車の275km/h制限を前提として
相対速度の問題については無視して考えます。
(2005.10追記)
閉塞問題及び輸送力についての考察を行い、それに基づいた修正を当初公開のものに加えて
おりますが、総合条件及び車輌の項については一切の変更を行っておりません。
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●総合条件
まず、どのケースでも同様となる条件から先に記す。本州側新在分岐点〜北海道側新在分岐点の間は
本州側分岐点より9.5km地点の奥津軽(現津軽今別)、72.5km地点の知内に待避線を用意し、この2箇所以外には
追い抜き可能な施設を設けないこととする。
新幹線車輌の性能と所要時分は先の北海道新幹線予想ダイヤに準じ、貨物列車の最大定数は現状通り
換算100両とする。軸重制限は16.8t、現在定期23往復臨時3往復の高速貨物が設定されていることを鑑み
最低でも30往復は貨物列車が設定可能なダイヤとし、現状通りその全てをコンテナ列車とする。
また、新幹線区間の慣例に従い運行時間帯は6〜24時の18時間に限定する。
270km/h列車に対する先行間隔は2分45秒、後追い発車の時刻は通過待避時30秒後、停車列車待避時1分後
とする。
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●閉塞問題
青函トンネル特有の制限。現在、非常時には乗客乗員の避難を円滑に行い安全を確保できる
様、津軽今別(奥津軽)〜竜飛定点〜吉岡定点〜知内間各々を単一の閉塞として取扱い同時に
複数の列車が進入できないこととなっている。各閉塞に1本以下の列車しか存在しなければ、トンネル内の
全ての列車が前方最近の定点または坑口外に停車することが可能だからである。
しかし、貨物列車には牽引機以外の場所に乗員が存在しない。これは前頭部さえ定点に掛かれば
避難が十分に行えるのであるから、旅客列車の様に列車長全てが定点のホームに入る必然性は
ない。つまり、旅客列車の続行として貨物列車が運行される場合には、閉塞間に2列車を同時進入
させても非常時の避難経路は確保される。更に、坑口からトンネル外の両駅までの間はトンネル内と
別扱いとして差し支えない。
以上より、乱暴な手段ではあるが、先行列車が旅客列車且つ続行列車が貨物列車の場合に
限り、閉塞間に2列車が存在できるものとして取扱う。また、奥津軽〜竜飛定点間、吉岡定点〜知内
間の閉塞をそれぞれ坑口で2分割した。どのみち新函館開業までの間に信号保安設備の更新が
避けられない以上、CTCに若干の機能追加を行う程度のこの変更は、必要とあらば行える性質の
ものであると判断した。
これを行わないと、各ケースに於いて貨物輸送力が3〜5割程度減少する。新幹線に皺寄せが
行くか、海峡線内のルールに若干の手直しを加えるか、貨物輸送力を減少させるか、から
選択しなければならないのが実情である。
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●輸送力
新幹線列車に於ける旅客輸送力については、東京〜札幌間の列車を東京発は6:00、6〜19時台
毎時56分、6〜19時台毎時16分、札幌発は6〜19時台毎時35分、6〜19時台毎時56分、20:32の
計29往復とし、やや控え目に先の例のE5系8連(定員598名)で輸送力を
計算すれば598×29×2=34684人/日、×365≒1266万人/年となり、東京〜札幌間に於ける現在の
航空利用者数を4割近く上回るほどの規模となる。つまり、相当量の需要が喚起されない限りは
平均2往復/時の運行で関東対札幌間の需要を賄える計算になる。
また8連(598名)でもB747-400Dの定員569名を上回り、12連想定では1.6倍ほどとなる。12連を
交えて3本/時も運行すれば時間当たりの輸送力は現行の航空輸送力と肩を並べ、繁忙時間帯でも
対応可能な範囲であることが窺える。繁忙時間帯には通常時間帯に函館止まりとして設定している
列車を札幌まで運行することとすれば、東京口の運行密度に影響は及ぼさないので3往復/時までの
対応は極めて容易であろう。
以上より、青函トンネル通過の新幹線列車を5本/時以上設定するのは輸送力の面から非現実的と
判断できる。想定として5本/時以上の場合を示している部分も一応以下にあるが、比較対照が
目的だからであって現実に行うべきとは考え難いものである。
(※2005/9/26に某スレ45へ名無しで書いたことの焼き直し)
一方、貨物輸送力は現在1000t列車26往復、コキ1両当たりコンテナ重量32tとして16640t相当
である。
仮に東海道筋等で行われている1300t牽引が開始されれば貨物の運行本数を増やさず
とも輸送力を1.3倍まで引き上げられるのでかなりの余裕が生じるが(40往復で現行比2倍)、少なく
とも津軽線〜海峡線〜江差線内での待避線延長並びに東青森及び五稜郭での増解結が必要と
なるのでこの手段は取り難い。ましてや、東青森での増解結を行わず本州内でも1300t牽引を
行おうものなら東北本線及び日本海縦貫線で待避線延長に加えて変電所の増強までも
行わなければならず、莫大な投資が必要となってしまう。従って編成長は変更しない、つまり
現状通りの1000t列車のまま、輸送力は本数の変更のみに依って変化するものとして扱う。
定時性を求める貨物輸送が潜在的にどの程度存在するのかは判らないが、現状輸送量以上で
あることについては容易に推察できる。現在北海道対内地の鉄道貨物シェアは1割程度で
あるが、他地域の例から考えるに「可能なら定時に」という潜在需要は相当量存在する
だろう。従って、貨物輸送量については具体的な目標値を設定するのではなく、個別の例に
於いて「新幹線を圧迫しない範囲でどこまで増強可能か」という観点から見るべきと判断する。
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●車輌
これは動力車の粘着性能が鍵となる。動輪周引張力が加重に対して大きくなり過ぎると
空転が起きてしまうので、単に出力を引き上げるだけで幾らでも加速度が増すのでは
なく、加速度に影響を与えるほどの空転が発生しないであろう範囲に抑えて運転曲線を
引かなければならないのである。
動輪軸重が16.8tならば、理想に近い摩擦係数μ=0.3とすると動輪一軸当たり49.43kN。これを
劣悪条件が発生する可能性が極めて低いトンネル内での0km/h時の上限とする。また、粘着係数の
速度変化式に当て嵌めると135km/hの際にはこれが26.42kN/軸にまで低下する。
12‰相当の勾配抵抗は1135t換算で133.6kN。そして走行抵抗の速度変化式より、120km/h時の
走行抵抗は21両1135t換算で61.5kN、135km/h時の走行抵抗は21両1135t換算で73.6kN、155km/h時の
走行抵抗は21両1135t換算で85.0kN。つまり、125km/h運転を考えるならば120km/h時
に195kN、140km/h運転を考えるならば135km/h時に207kN、160km/h運転を考えるならば155km/h時
に219kN程度の引張力は残していなければならない訳である。
一方、トンネル外では悪条件を想定し、摩擦係数はμ=0.2とする。これで動輪一軸当たり32.95kN。これを
用いれば8軸で263.6kN、12軸で395.4kN、16軸で527.2kNとなる。
なお、単に海峡線区間を高速化すれば良いというものではなく、新幹線列車から逃げ切り且つ
トータルでの所要時間をできるだけ抑えつつも、海峡線通過対応の貨車を1000両以上製造しなければ
ならないので過剰なコストを削る必要があることを忘れてはならない。
また所要時間を考えた場合、少なくとも海峡線通過だけの為に積み替えの手間を強いるなど
以ての外である。従って相当長の区間に於いて標準軌走行が可能とならない限り、標準軌専用車輌は
不可となる。
更に、GCT(旧呼称FGT)は技術的な問題を置いておくにしても、4桁に及ぶ大量の貨車を製造する
必要を考えるとコストについて疑問視せざるを得ない。
従ってここでは狭軌専用車輌についてのみ考えることにする。本格的に新幹線上を走行する場合の
考察は、他の方々が書かれたものがWeb上にある程度存在するのでそちらに委ねたい。
さて、これらの条件をほぼ満たすように設定した車輌が必要になる訳だ。大幅にまでは過剰な性能と
ならない程度の例を8つ、それと敢えて種々の問題を無視して高性能化してみた参考例を1つ用意してみた
ので、まずはそれぞれの概要について記していく。
○(1):EH500重連――現有車輌を極力活かす場合
現行の牽引機をそのまま使用できる上、牽引機付け替えまでは行わずに補機の増解結のみで
対応できるので特殊なことを考える必要がない。一応H級電機に重連総括制御の追加という前代未聞の
改造は必要だが、せいぜいその程度のことである。
各例の中で最も大きな起動引張力となるので低速性能がやや過剰気味か。
定格引張力480kN、定格速度58.5km/h、1000t牽引時「起動」加速度2.38km/h/s、定格引張力時
加速力1.36km/h/s、上り12‰均衡136km/h(但し短時間定格で計算且つこの速度まで定出力領域を継続できた
場合)。出力は1時間定格8000kW、短時間定格9120kW。定格
出力での抑速制動は最高速度まで支障なし。
但し、EH500の設計最高速度は120km/hなので130km/h以上の運転は困難と思われる。あくまで単機で
上り12‰均衡が90km/h止まりであるものを最高速度維持可能とし、加減速時間を短縮する為の措置である。
○(2):L級電機――単機最大粘着力
実質的にこれを単機と呼んでも良いのかどうかは疑問だが、製造されれば少なくとも車籍上運用上は単機である。
基本的にEH500のL級化という事で、軸重16.8t、定格引張力360kN、定格58.5km/h、1000t牽引&定格引張力時
加速力1.08km/h/s、上り12‰均衡118km/h(EH500重連の場合と同条件)。1時間定格6000kW、短時間定格6780kW。
この数字は歯数比を変えない場合のものなのでやはり120km/h止まりとなるだろうが、ほぼ最高速度に貼り付ける
ので高速域での性能の無駄は各例の中で最も少ない。
○(3):H級電機@750kW電動機――中途半端
7〜800kW級の電動機をわざわざ新規設計する必要がある。降雪時に空転しない引張力はEH500単機
同等で240kN。また、定出力領域では2をやや上回る程度の引張力である。最低限の構成にできるという
利点はあるが、特筆すべき点はそれのみであり、性能上は全領域で1を下回る。
どうしてもH級単機にしなければならない理由があれば話は別だが、EH500がこれだけ製造されている
現状があってわざわざこれを新形式として製造するほどの理由はおそらく無いだろう。
とりあえず速度特性をEF200に合わせてみると、定格引張力261kN(現実的に常時発揮できるのは240kN程
度)、定格速度81.2km/h、1000t牽引時実質起動加速度約0.8km/h/s、上り12‰均衡129km/h(但し最大出力
時)。定格出力6000kW、最大出力7200kW。
この場合、EF200同様にやはり120km/h止まりとなる可能性が高い。
○(4):H級電機@FMT2、但し公称定格750kW――高速性能重視
本来定格1000kWのFMT2を、敢えて公称定格750kWとして扱う。これは定格565kWのFMT4がEH500では
公称500kWとして扱われたのと同じ手法である。
あくまでH級なので定格引張力は240kNに設定しつつ、トンネル内想定のμ=0.3で粘着性能が足りると
思われる高速域では定格超、本来の電動機定格の定出力8000kWで計算する。
歯数比を18:71と設定すれば電動機定格速度は96.5km/h、以上の条件でVVVF制御終端速度
は117.6km/h。1000t牽引時起動加速度0.76km/h/s、上り12‰均衡136km/h(8000kW時)、歯数比16:75に
於ける120km/h相当の電動機回転数は143km/hとなるので140km/h運転がほぼ確実に行える。また、1C1Mと
すれば1M開放でも所定の出力を確保できる。
イニシャルコストはやや高く付くが、これならばEH500のほぼ純粋な高速仕様として扱える。
○(5):SRC(その1)――粘着性能上は最適、但し輸送過程そのものに難あり
コンテナ限定の電化区間貨物高速運転となれば当然これがある。1000t列車と同等の輸送力を
確保する為には12ft(5t)コンテナなら100個相当、20ft(9t)コンテナなら60個相当、31ftコンテナ
なら40個相当を運べれば良い。
しかしながら、M250系では16連で31ftコンテナ28個止まり、これでは要求される量には到底
足りない。また、交流区間を走行するのに4M12Tとするならば機器スペースの都合上M車の一部には
コンテナが積めなくなる。従って無積載車を作るかM車を増やすか、何れにしても積載量を
維持するだけでも長編成化が必要となるのに、その上更に輸送量の増加を要求されるので
ある。高速運転にこそ向いているが、大量輸送には難があると言わざるを得ない。
一方待避線の有効長は470m止まりなので、海峡線内のみならず他の線区にまで影響を及ぼすことを
考えればこれを徒に伸ばすことは得策ではない。従って編成長は最大でも23両以内に制限される。ま
た、M250系同様にT車が2両ユニット構成を取るならば22両が上限となる。これは1000t貨物の重連
牽引時と等長なので、編成が長過ぎることによる問題はこの範囲内に限りほぼ解消される。
そして何より、この方式にはそのままでは非電化区間に乗り入れられないという対北海道輸送では
最大の難点が存在する。更にコンテナ非積載車がある場合には速度が制限されるという問題まで
あるので、海峡線通過時には東青森と五稜郭で荷扱いをしたり空コンテナを積んだりしてでも
必ず満載にしなければならない。
とりあえずこの2点は置いておくとして、仮に22連で現状同等のMT比を確保する
ならば22(4/16)=5.5、つまり6M16T構成となる。31ftコンテナ専用では汎用性に劣るので
一般の12ftコンテナと20ftコンテナの積載を可能として考えると、M車には12ft×2個
若しくは20ft×1個が積載可能であろう。
T車の積載を通常のコキ系列と同等とすれば、編成全体では12ftコンテナ
なら2×6+5×16=92個。20ftコンテナなら1×6+3×16=54個。31ftコンテナ
なら1×6+2×16=38個。1000t列車同等とまでは行かないが、この様に900t列車程度の輸送量は
維持できるのである。これを補う為には運行本数を1割程度増やす必要がある他、仮令五稜郭で
一般貨車への積み直しをしようとも本州内で一列車当たりの輸送量が現行よりも抑制されることに
よる影響は無視できない。そもそも積み直し自体に相応の時間を取られるので、動力分散化による
所要時間減が打ち消される可能性が大いに懸念される。よしんばT車をそのままDF200牽引に
回して所要時間減を抑えるとしても、それでは一列車当たりの輸送量減をカバーすることが
不可能である。現状の1000t列車が800t列車になる分だけ道内での速度向上も可能だろうが、輸送
量にそれだけの余裕があるものだろうか。
この方法を取るならば、所要時間減の代償としてある程度輸送量に目を瞑る必要がある。
とりあえず、性能についても考えてみよう。
現状通りならば220kW×24=5280kW。定格出力及び定格速度より、電動機は223系1000・2000代で
使用されるWMT102の同等品と考えられる。歯数比15:91で、出力ではなく電流等条件を定格値に
合わせて用いれば、1100×142×√3×24≒270×24=6480kW。ここから定格引張力287.7kNと
なり、起動加速度は満載50×22=1100t時に0.94km/h/sである。電車列車なので粘着係数の期待値は
低くなるが、動軸が24軸あるので何ら問題ない。実測値より定出力領域の終端は約128km/hと
推定され、上り12‰均衡は118km/h。
電動機は140km/hまで行けるが、登攀性能がそれに付いて行かないので下り勾配140km/h、上り
勾配120km/hの平均130km/hが妥当な所だろう。
○(6):SRC(その2)――定格出力を変えずに別の電動機へと変えてみる
この方式のデメリットはそのままだが、若干の性能向上を狙って電動機をWMT102から681系
のWMT103へと変えてみた。
例(5)に同じく計算すると1100×152×√3×24≒290×24=6960kW。
681系と同じ歯数比18:94で160km/hまで電動機が耐えられることは火を見るより明らかな上に
定出力領域もここまで継続できるが、この程度では上り12‰の140km/h超が極めて難しいこと
も2・3・5より明らかなので歯数比は落とした方が良い。15:91にすれば140km/hが681系
の163km/hに相当、電動機定格3540rpmは90.2km/hに相当する(車輪径820mm時)。
これで定格引張力は256.9kN、起動加速度は満載1100t時に0.84km/h/s、上り12‰均衡は123km/hで
ある。 但し、定出力領域を681系の実運用に合わせると最大出力は約8600kWまで跳ね上がる。実
効8000kWとすれば上り12‰均衡は140km/h/s。
例(5)共々、4000kWに制限しても上り10‰均衡は99km/hであるから、在来線運用をする限りは
この辺りで十分だろう。
○(7):SRC(その3)――狭軌貨物電車での限界を探ってみる
例(6)から更に手を加え、歯数比を681系同等に戻して下り勾配での160km/hを視野に入れて
みた。また電動機負荷は敢えて余裕を持たせずに681系同様能力一杯まで酷使するが、その代償と
して連続力行に制限が加わる。定格引張力は400kN、起動加速度は満載1100t時に1.31km/h/s。
青函トンネルの条件を考えるとWMT103よりも、特性が同一で定格電力のみが増加したWMT105を
使用する方が適当であろう。
なお、当然ながらコンテナ締結装置等の装備も含め160km/hで安定走行可能なT車を新規設計しなければ
ならない。
○(8):F級電機補機@FMT2――補機最小構成を見据えて
EH500を本務機に据えたまま、補機を一車体構造にするとどうなるのかという事でこんな可能性も
考えてみた。なお、最高速度はEH500に引き摺られて120km/hに制限される。
歯数比等はEF200に合わせるが、確実な引張力の確保の為に敢えて一軸当たりの引張力をEH500と
同じにすると180kN、定出力領域での出力もEF200に合わせると定引張力領域は117km/hまで継続
される。当然EH500とは引張力特性が異なるのである程度特殊な力行曲線になるが、旅客列車でも
なく補機は青函間限定運用であるから多少の事は許容範囲と考えてしまう。
1000t牽引時起動加速度1.22km/h/s、EH500のみ定出力領域の速度域の
加速度(40.93/V+0.52)km/h/s、双方定出力領域では(102.63/V)km/h/s、上り12‰均衡は147km/h(但し
定格出力時)。
扱いがあまりに特殊になってしまう上に高速性能が過剰なので、現実問題としてはまず考え
られないが一応こんな所で。
またH級補機も計算するにはしてみたが、EH500が本務機である限り最高速度は120km/hのまま
加減速時間を短縮するのみでしかないので割愛した。
○参考:L級電機@FMT2――動力集中方式での貨物新幹線の可能性
ついでに、更なる高速化の可能性を追求する為にこんな化物を考えてみた。定格12000kW、定出力領域で
約(42400/V)kN、1000t牽引では定格出力時上り12‰均衡166km/h、最大出力(14400kW)時上り12‰均衡186km/h。ここ
まで来ると最早貨物新幹線が視界に入ってくる領域である。因みに最大出力時上り10‰は197km/hとなり、これは
新幹線0系をも上回る。84kmを26分余りで駆け抜けられるので、分岐制限による加減速を考慮しても待避の必要が
無い。また、動軸12軸のみ軸重16.8t、他軸12.5tで200km/h程度ならば軌道に与えるダメージは明らかに200系以下に
抑えられるので、高速運転を新幹線規格軌道上のみに限れば特段の考慮までは必要無いだろう。
一方歯数比は低速トルク無視の高速仕様にしなければならないし、貨車も牽引及び走行周りの部分を特別仕様に
せねばならず、コンテナカバーまで用意しなければならないので、大幅な料金上乗せが可能な高速貨物需要が
余程高まらない限りは実現しないと思われる。更にMT比3:10、軸重比を勘案してもたかだか1:2.5でしか
ない列車が200km/h前後で走行した例は国内に存在しない。海外に目を向ければ動軸軸重17t、積車質量換算
でのMT比が1:3ながらも300km/h走行のユーロスターという例があるし、他にも欧州では200km/h前後の機関車
牽引列車が多数存在することから駆動面のみを見れば技術的には十分可能な範囲であると考えられる。しかし
逆に見れば、コンテナ貨車にも欧州の高速列車群と比べて遜色無い走行安定性が要求されるのである。超高速
貨車のノウハウが国内に無い以上、長期の新規研究や欧州との提携等が要求されることは想像に難くない。そも
そも、全区間新幹線軌道上走行前提の標準軌車輌ならともかく狭軌車輌ともなればこの速度域では存在すら
しないのだ。不可能と言う気はないが、それ相応の研究期間を要する難題であることは確かだろう。
妄想以外の何物でもない領域ではあるが、潜在的な可能性という事で参考までに記してみた。
○参考:抑速制動と走行抵抗と勾配加速度――在来車輌同等の走行抵抗に於ける実質的な最大値
20km以上続き、高低差250m以上に及ぶ勾配の為に抑速制動の連続最大出力も算出する必要がある。……ところ
が、計算してみると実は必要最小限度を考える限りでは事実上問題にならないのである。
コンテナ満載を前提として走行抵抗の速度変化式及び勾配抵抗をそのまま用いると、下り12‰での
勾配加速度と走行抵抗の和に相当する仕事率の式を速度で微分して計算し易い様に係数を弄れば
89t-41tv/300-(140+39b)v2/600
(但しt=編成重量、v=速度、b=(編成両数-1))
とできるが、1100〜1270t、22〜24両(H級は2両、L級は3両とした)の範囲ではこれが0となる速度は
概ね110〜120km/h程度の範囲に留まった。つまり、新幹線車輌の様に走行抵抗を低減した車輌では
なく、新幹線断面トンネル内に於いて一般の速度抵抗式にほぼ一致する走行抵抗を示す車輌で120km/h超の
運転を行う場合、最高運転速度では逆に下り12‰で一定速度に保つ為に必要な回生電力が減少するという
事態が発生するのである。
これらのピーク時の数字は概ね2200〜2700kW程度。つまり、多少走行抵抗が小さくなったと
しても連続して3〜4000kWも出せれば十分であり、少々考え難いが逆に走行抵抗が大きければ速度が
上げ難くなる分、必要な抑速制動の負担量は更に小さくなる。
従って、海峡線内では抑速発電制動用の抵抗器は4000kW程度あれば十分に役を為す。この程度で
あればEH200よりも少ないほどなので、積載位置等に特段の配慮をする必要までは無いだろう。
尤も高速運転が要求されているのは新幹線軌道内であるから、回生失効は滅多に起きないと
思うが、7時頃や23時頃等の列車密度、在来線区間走行時の冗長性を考えれば回生発電併用で
抵抗器にそれなりの容量があってもそう無駄なものでもないだろう。
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●基準運転時分
以上の各車輌例に沿って、新幹線列車待避を前提とし奥津軽及び知内停車の場合の基準運転時分を
算定してみると本州側新在分岐点〜木古内間では次の通りとなる。なお新在分岐点及び木古内は
通過させ、奥津軽及び知内の待避線並びに本州側及び木古内側新在分岐点の分岐器は20番として
制限70km/h(計算65)で算定した。
低速時以外の制動は電気ブレーキのみとして、力行曲線と制動曲線は裏返したのみのものを用いて
計算した。空気ブレーキも付加すれば更に制動力が上がるだろうが、計算が若干面倒になるのと
確実な減速性能の確定と保守性の問題から敢えてこれに留めておいた。
○(1):EH500重連
駅 名 |
運転曲線駅間所要 |
余裕時分 |
基準時分 |
併用区間内 走行時分 |
停車駅間 平均速度 |
下り |
上り |
下り |
上り |
下り |
上り |
下り |
上り |
下り |
上り |
(新在分岐点)
奥 津 軽
知 内
木 古 内
|
5'52
33'15
7'01
|
5'52
33'15
7'01
|
0'30
1'30
1'00
|
1'00
1'30
0'30
|
6'30
34'45
8'00
|
7'00
34'45
7'30
|
┐
49'15
┘
|
┐
49'15
┘
|
87.7
108.8
88.5
|
81.4
108.8
94.4
|
運転最高速度125km/h、計算120km/h。
○(2):L級電機
駅 名 |
運転曲線駅間所要 |
余裕時分 |
基準時分 |
併用区間内 走行時分 |
停車駅間 平均速度 |
下り |
上り |
下り |
上り |
下り |
上り |
下り |
上り |
下り |
上り |
(新在分岐点)
奥 津 軽
知 内
木 古 内
|
6'09
33'51
7'18
|
6'09
33'51
7'18
|
0'30
1'30
1'00
|
1'00
1'30
0'30
|
6'45
35'30
8'15
|
7'15
35'30
7'45
|
┐
50'30
┘
|
┐
50'30
┘
|
84.4
106.5
85.8
|
78.6
106.5
91.4
|
運転最高速度125km/h、計算120km/h。
○(3):H級電機@750kW電動機
駅 名 |
運転曲線駅間所要 |
余裕時分 |
基準時分 |
併用区間内 走行時分 |
停車駅間 平均速度 |
下り |
上り |
下り |
上り |
下り |
上り |
下り |
上り |
下り |
上り |
(新在分岐点)
奥 津 軽
知 内
木 古 内
|
6'58
34'22
8'07
|
6'58
34'22
8'07
|
0'30
1'30
1'00
|
1'00
1'30
0'30
|
7'30
36'00
9'15
|
8'00
36'00
8'45
|
┐
52'45
┘
|
┐
52'45
┘
|
76.0
105.0
76.5
|
71.3
105.0
80.9
|
運転最高速度125km/h、計算120km/h。
○(4):H級電機@FMT2、但し公称定格750kW
駅 名 |
運転曲線駅間所要 |
余裕時分 |
基準時分 |
併用区間内 走行時分 |
停車駅間 平均速度 |
下り |
上り |
下り |
上り |
下り |
上り |
下り |
上り |
下り |
上り |
(新在分岐点)
奥 津 軽
知 内
木 古 内
|
5'55
30'22
7'04
|
5'55
30'20
7'04
|
0'30
1'30
1'00
|
1'00
1'30
0'30
|
6'30
32'00
8'00
|
7'00
32'00
7'30
|
┐
46'30
┘
|
┐
46'30
┘
|
87.7
118.1
88.5
|
81.4
118.1
94.4
|
運転最高速度145km/h、計算140km/h。
○(5):SRC(その1)
駅 名 |
運転曲線駅間所要 |
余裕時分 |
基準時分 |
併用区間内 走行時分 |
停車駅間 平均速度 |
下り |
上り |
下り |
上り |
下り |
上り |
下り |
上り |
下り |
上り |
(新在分岐点)
奥 津 軽
知 内
木 古 内
|
6'00
31'27
6'59
|
6'00
31'16
6'59
|
0'30
1'30
1'00
|
1'00
1'30
0'30
|
6'30
33'00
8'00
|
7'00
32'45
7'30
|
┐
47'30
┘
|
┐
47'15
┘
|
87.7
114.5
88.5
|
81.4
115.4
94.4
|
運転最高速度145km/h、計算140km/h。
○(6):SRC(その2)
駅 名 |
運転曲線駅間所要 |
余裕時分 |
基準時分 |
併用区間内 走行時分 |
停車駅間 平均速度 |
下り |
上り |
下り |
上り |
下り |
上り |
下り |
上り |
下り |
上り |
(新在分岐点)
奥 津 軽
知 内
木 古 内
|
6'03
29'58
7'02
|
6'03
29'58
7'02
|
0'30
1'30
1'00
|
1'00
1'30
0'30
|
6'30
31'30
8'00
|
7'00
31'30
7'30
|
┐
46'00
┘
|
┐
46'00
┘
|
87.7
120.0
88.5
|
81.4
120.0
94.4
|
運転最高速度145km/h、計算140km/h。
○(7):SRC(その3)
駅 名 |
運転曲線駅間所要 |
余裕時分 |
基準時分 |
併用区間内 走行時分 |
停車駅間 平均速度 |
下り |
上り |
下り |
上り |
下り |
上り |
下り |
上り |
下り |
上り |
(新在分岐点)
奥 津 軽
知 内
木 古 内
|
5'22
27'05
6'17
|
5'22
26'02
6'17
|
0'30
1'30
1'00
|
1'00
1'30
0'30
|
6'00
28'30
7'15
|
6'30
27'30
6'45
|
┐
41'45
┘
|
┐
40'45
┘
|
95.0
132.6
97.7
|
87.7
137.5
104.9
|
運転最高速度165km/h、計算160km/h。
○(8):F級電機補機@FMT2
駅 名 |
運転曲線駅間所要 |
余裕時分 |
基準時分 |
併用区間内 走行時分 |
停車駅間 平均速度 |
下り |
上り |
下り |
上り |
下り |
上り |
下り |
上り |
下り |
上り |
(新在分岐点)
奥 津 軽
知 内
木 古 内
|
5'52
33'16
7'01
|
5'52
33'16
7'01
|
0'30
1'30
1'00
|
1'00
1'30
0'30
|
6'30
34'45
8'00
|
7'00
34'45
7'30
|
┐
49'15
┘
|
┐
49'15
┘
|
87.7
108.8
88.5
|
81.4
108.8
94.4
|
運転最高速度125km/h、計算120km/h。
○参考:L級電機@FMT2
駅 名 |
運転曲線駅間所要 |
余裕時分 |
基準時分 |
併用区間内 走行時分 |
停車駅間 平均速度 |
下り |
上り |
下り |
上り |
下り |
上り |
下り |
上り |
下り |
上り |
(新在分岐点)
奥 津 軽
知 内
木 古 内
|
5'17
22'27
6'05
|
5'17
22'22
6'05
|
0'30
1'30
1'00
|
1'00
1'30
0'30
|
5'45
24'00
7'15
|
6'15
24'00
6'45
|
┐
37'00
┘
|
┐
37'00
┘
|
99.1
157.5
97.7
|
91.2
157.5
104.9
|
運転最高速度205km/h、計算200km/h。
○参考:L級電機@FMT2(無待避)
駅 名 |
運転曲線駅間所要 |
余裕時分 |
基準時分 |
併用区間内 走行時分 |
停車駅間 平均速度 |
下り |
上り |
下り |
上り |
下り |
上り |
下り |
上り |
下り |
上り |
(新在分岐点)
奥 津 軽
知 内
木 古 内
|
3'46
18'54
4'28
|
3'46
18'54
4'28
|
0'30
0'30
1'00
|
1'00
0'30
0'30
|
4'15
19'30
5'30
|
4'45
19'30
5'00
|
┐
29'15
┘
|
┐
29'15
┘
|
134.1
193.8
128.7
|
120.0
193.8
141.6
|
運転最高速度205km/h、計算200km/h。
基準運転時分については以上。
そしていよいよ、ケース毎にどの車輌例が適するのかを具体的に見ていくことにする。
|
●個別条件
奥津軽〜知内間に於いて貨物列車が許される所要時分の上限は余裕時分を含めて
下りは34分0秒及び39分45秒が各1本/時、上りは36分30秒が2本/時とする。
他条件は先の北海道新幹線予想ダイヤの通り。
|
●運行ダイヤ
条件に示した限界は以下の通りとなる。
|
上りについては例(1)〜(8)の全てがスジに乗れるので問題ない。
下りは、例(4)〜(7)以外では立っている方のスジに乗れないので少々問題がある。この4例の共通点は
最高速度が140km/h以上であることで、加速性能が例(4)を上回るにも関わらずスジに乗れない例が存在する
ことからも、やはり多少の加速性能を犠牲としてでも電動機・歯数比等を高速対応として130km/h超の
高速運転を行わなければならないことが窺える。
この場合貨物の最大本数は2×18-1=35本。貨物輸送力は現状の35%増となる。函館本線内の線路容量が足りるか
どうかは少々怪しいが、札幌開業後であれば特急が存在しないので設備の撤去を行わなければおそらくどうにか
なるだろう。
ここでEH500単機にすると、1本/時しか走らせられずかえって貨物輸送力が減少してしまう。従って、この
例では青函通過の為に電機を新造することは避けられない。
因みに、前掲車輌例の中では例(7)のSRC165km/hか参考例の12000kW級電機205km/hでないと3本/時
運行は行えない。つまり、新幹線ダイヤをこう組んだ時点で事実上貨物は最大2本/時に制限される
ことになる。
新幹線列車を2本/時とすれば他の車輌例でも貨物を最大3本/時と為し得るが、この場合
でも貨物の130km/h超走行が必須となる。
以上よりこのケースでは、例(4)「H級電機@FMT2、但し公称定格750kW」を最適車輌例とする。
新幹線側の制限を少なくでき貨物輸送力を現状程度で維持できる反面、貨物側に相当の投資を
強いられ、新幹線貨物共に大幅増が困難であるのが特徴と言えるだろう。
|
●個別条件
新幹線列車の停車パターンと速度は変えず、また1時間パターンを維持しながらも時刻については
変更して3本/時が続行運転となるようにする。貨物のスジは3本/時が可能となる中で最も所要時間を
要する例(2)に従う。
他条件は先の北海道新幹線予想ダイヤの通り。
|
●運行ダイヤ
条件通りにすると本数の限界は以下の通り。
|
3本/時、最大本数は3×17=51本となる。
この場合、例(4)にすれば4本/時がどうにか可能となる。しかし3本/時で既に現行比約2倍の輸送力を
確保できるので、余程の需要増がない限りは4本/時までは求められないと考えられる。8000kW級の
牽引機を投入するとなれば、輸送力増の為でなく冗長性や余裕時分の確保を狙ってのことであろう。
11〜12分間隔で貨物が3本続行運転となるので津軽線内及び江差線内のダイヤが若干
気懸かりだが、この程度の本数であれば待避時間によって調整することでおそらくどうにか
なるだろう。
このケースでは、新製するなら6000kW級単機の例(2)「L級電機」で必要十分で
あるし、現行程度の輸送力で済むならばEH500でも対応可能である。
難点は新幹線列車が3本続行となってしまい旅客の利便性を損ねることか。
|
●個別条件
新幹線列車の停車パターンと速度はそのままながら、線路容量を有効に使用する為に1時間パターンを
複数用意して貨物主体の時間帯と新幹線主体の時間帯に分離してある。つまり同一線上で、時間帯区分に
よって緩急分離を行うのである。
ここでは、貨物主体の時間帯に於いては新幹線列車の運行を1本/時に留め、一方新幹線主体の
時間帯に於いては貨物列車を一切通さずに新幹線列車のみが運行されるようにしてみる。貨物の
スジは例(3)に従う。
他条件は先の北海道新幹線予想ダイヤの通り。
|
●運行ダイヤ
一例として以下の通りとなる。
貨物列車の一部が新青森及び新函館まで記してあるのは、それぞれ青森信号所及び五稜郭に読み替えて頂きたい。
|
貨物主体運行の時間帯では4本/時の貨物列車が続行して走ることとなる。一方、新幹線列車主体の時間帯では
新幹線列車が6本/時(札幌行12連×3、8連×1、函館行×2)。
貨物主体と新幹線主体とを2時間サイクルで繰り返すと津軽線及び江差線内区間の部分複線化が
不可避だが、貨物主体時間帯を3時間置きに取り、上下貨物の全列車が海峡線内ですれ違うようにすれば
ダイヤグラムの10〜11時付近からも解る通り単線区間でのすれ違いは存在しなくなる。
3時間サイクルとして更に6時台下りと23時台上りを貨物専用時間帯とすると最大本数は貨物が4×7=28本、新幹線
が6×11=66本。貨物は現状と殆ど変わらない運行本数に過ぎないが、新幹線列車については速度を維持しながら
輸送力を確保できる。
但し、これだと新幹線列車については札幌が2面4線、若しくは引上線が2〜3線はないと回し切れない。ま
た、前述の通り5本/時以上の設定は過剰である。貨物との兼ね合いの都合上新幹線列車の本数を
減らしたからといって毎時1本の新幹線列車が存在する限り貨物輸送力の増強には結び付かないが、単純に
過剰輸送力の問題から新幹線列車は最頻時間帯でも4本/時程度に落ち着くと考えられる。
なお、貨物の本数を3本/時にまで抑制してスジを寝かせると現行のEH500で賄えるが、輸送力が現状より
減少してしまうのでこれは問題外である。反面、牽引機を例(4)とすれば5本/時が可能となり、35%増まで
対応できる代わりに津軽線及び江差線に於いて線路容量の問題が懸念される。
つまりこのケースでは、新幹線列車の限界輸送力が著しい過剰となる反面貨物輸送力に余裕が
無くなってしまうのである。バランスを失しているので、早朝及び深夜の新幹線列車が少ない時間帯に限り
これを用いるのが現実的だろう。
|
●個別条件
1時間サイクルである点と新幹線列車の停車パターン、及び新青森以南のダイヤには手を加えないが、貨物を
多数通す為に敢えて新在併用区間内に於ける新幹線列車の速度を抑制する。
ここでは、制限205km/h(計算200)の場合と制限160km/h(計算155)の場合について扱ってみた。なお200km/hでの
先行間隔は1分45秒、155km/hでの先行間隔は1分15秒とする。
|
●運行ダイヤ
まずは制限205km/hの場合より。
|
新幹線上りの準速達列車並びに奥津軽及び木古内停車の列車で、運行間隔調整の為にわざと奥津軽通過〜新青森
発車までの間に大きな余裕時分を設定してしまう。こうすることで貨物の3本/時運行を可能としたが、現行
のEH500単機はおろか例(2)及び例(3)でもスジには乗れず、最低でも例(1)でなければならない。
これで貨物の最大本数は3×18-2=52本。貨物輸送力は現状の2倍となる。函館本線内の線路容量が足りるか
どうかが怪しくなってくるが、東北本線及び日本海縦貫線はおそらく対応可能な範疇だろう。因みにEH500単機に
すれば、2本/時のみ可能で最大2×17=34本と現状比31%増であるから、これでも当面は対応できる。
新幹線列車の所要時分は、先の北海道新幹線予想ダイヤに比べ青函間無停車の速達列車が
上下共に7分15秒、準速達列車が下りで7分15秒、上りで10分15秒、奥津軽及び木古内停車の列車が
下りで6分45秒、上りで11分0秒増加する。これによって東京〜札幌間は
下り3時間48分30秒/4時間3分45秒、上り3時間49分15秒/4時間6分45秒となる。
続いて制限160km/hの場合を。
|
何と、輸送力が同等となる貨物の限界スジは制限205km/hの場合と変わらない。これは新幹線列車
を160km/hまで抑えても、先行の貨物列車が閉塞内を通過するのに要する時間は変わらない上、新幹線列車同士の
続行間隔は函館方を原因として既に限界なので、線路容量に与える影響が微小に過ぎないからである。
新幹線列車の所要時分は、先の北海道新幹線予想ダイヤに比べ青函間無停車の速達列車が上下
共に14分45秒、準速達列車が下りで15分45秒、上りで16分45秒、奥津軽及び木古内停車の列車が
下りで14分0秒、上りで15分0秒増加する。これによって東京〜札幌間は
下り3時間56分0秒/4時間12分15秒、上り3時間56分45秒/4時間13分15秒となる。
205km/h制限の際に必要となった上り準速達列車の余裕時分確保は少なくなる代わりに下り列車でも
必要となり、更に160km/hへの減速で走行自体の所要時分が延びてしまい、上りについてもその差分が
相殺されるどころかえって所要時間が増大する。事実上意味がないどころか、速達列車まで巻き添えに
してしまうのでかえってマイナスとなるのだから、これは誤りと言い切ってしまって良いだろう。
現状比3割増の輸送量までであればEH500単機で賄えるので、当面はこれで問題無いだろう。但し
輸送力をそれ以上に引き上げようとする場合、突如出力約2倍、8000kW級の電機が必要になると
考えられるので貨物需要の変化は早めに見極める必要があるだろう。
つまりこのケースでは、新幹線列車205km/h制限の方を採用した上で、現状+αの輸送力で足りるなら
現状EH500のまま、大幅な輸送力増強が必要ならば例(1)「EH500重連」相当以上の牽引機を用意しなければ
ならない。とはいえ汎用性に富むEH500を青函間専用に増備するのは無駄が多過ぎるので、現実的には
例(8)「F級電機補機@FMT2」または例(4)「H級電機@FMT2、但し公称定格750kW」が好ましい。
青森で付け替えずに東北方面と青函間でのスルー運転を行う必要があるならば例(4)の実質8000kW級
電機、多少の時間増を覚悟してでも余分な投資を最小限に抑えるならば例(8)の6000kW級補機を
用意することになるだろうか。
因みに3本/時となると日本海縦貫線に1本/時、東北本線に2本/時流すことになると考えられるので
東北本線の在来線旅客列車にもそれなりの制約が課せられるが、運行密度を考慮すると東北本線小金井
以南を除いては許容範囲だろう。小金井以南についても、東北本線内を120km/h運転が可能な牽引機で
牽くことで解決できる程度である。
輸送力を増す必要が生じた際に初めて道内での設備増強が必要となり、現状同等であれば車輌投資は
事実上不要、新幹線の所要時分増は2〜3駅停車相当なので、最小コストを目指すのであればこれが
最適のケースとなる。
|
この様に、貨物列車の海峡線通過形態を定めることが事実上新幹線ダイヤの主要部形態を定めることにほぼ
等しくなるわけです。貨物にそれなりの投資をして新幹線と釣り合いを取るのか、新幹線の利便性をある程度犠牲に
しつつも貨物輸送力を敢えて増強するのか、貨物を優先させて思い切って新幹線列車の速度を抑えてしまうのか。
また、現状維持でコストをなるべく抑えるのか、それとも資本を更に投入して貨物輸送力を大幅に強化する
のか。いずれにせよ、この区間が鍵を握ることに変わりはありません。
閉塞を考慮してみた所最大貨物輸送力にこそ大きな変化は生じましたが、新幹線列車に270km/hへの減速以上の
影響を強いることをしない限り6000kW級の電機が必要となることは相変わらずです。
反面、現状比5割増またはそれ以上の貨物輸送力が求められた場合、具体例の記述は省きましたが160km/h以上
での運転と8000kW級の出力を兼ね備えることを要求されると判明したのが新たに浮上した課題です。青函間での
待避線を延長し、更に東青森及び五稜郭での分割併合をも行って貨物の牽引定数を増さない限り、列車数を
増やさずに貨物輸送力を強化することは叶わないので、新幹線を犠牲にしない限りは大幅な貨物需要増には
応えられないのです。
念の為記しておきますが、以上は例によって既設設備等一部の例外を除いて全て公表された計画を下敷きとして
独自に試算したものです。あくまで一個人の試案ですので、検索等で来られた方は誤解の無き様。
当然ながら、引用も御自由にどうぞ。
○履歴
立案:2004/11/下旬
着手・線路条件:12/9
海峡線概要試算:12/10
各車輌例概要:12/27
各車輌例基準運転時分:2005/1/1
ケース確定:1/3
ケース1〜3:1/4
ケース4・全体調整・公開:1/5
修正(青函トンネル内閉塞条件考慮及び輸送力考察追加):10/28
参考資料:○ルート・線路条件
北海道新幹線想定ダイヤの参考資料を以って代える。
○現状ダイヤ・輸送量・コンテナ規格等資料
北海道新幹線スレッド
まとめページ内、北海道新幹線の並行在来線について、
JR貨物本社サイト、JR貨物北海道支社サイト、平成8年度運輸白書(運輸省、1997年)、
内航
海運港別品目別輸送量(北海道運輸局、2004年)、
平成16年度航空輸送
統計速報(国土交通省総合政策局、2005年)
○車輌資料
モーダルシフトを支える
機関車・貨物輸送システム(長瀬光範・沼崎光浩、2004年)、
インバータ電車制御概論(飯田秀樹・加我敦、2003年)、JR西日本サイト、
世界の高速鉄道(佐藤芳彦、1998年)、北越急行サイト、近畿車輛サイト、
2003秋頃の運転協会誌(内容はEF200勾配起動試験、立ち読みの為号数失念)、
鉄道ジャーナル95年3月号、鉄道ファン94年2月号及び95年11月号、
鉄道ピクトリアル増刊新車年鑑2004、etc.
(以上敬称略)
(C)2004-2005 far-away(◆farawagyp.)
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