以前公開した北海道新幹線予想ダイヤと密接に
関わる問題です。 わざわざ275km/hに落としたり、新函館止まりのはやてをわざと準速達列車に近付けたりしたのは これが原因で、速度が大きく異なる列車群を63.0kmに渡って待避設備の無い区間に於いてどうやって 共存させるか、という難題への回答の一部を兼ねていました。 ここでは、4本/時以内であれば事実上問題ないにも関わらず敢えて輸送力確保の為に5本/時以上の列車を 通すケースを4通り用意して、新幹線車輌及び軌道を除く条件を個別に想定してから考えてみることとします。 なお、幸いにして防風壁を設置するとの事なので、新幹線列車の275km/h制限を前提として 相対速度の問題については無視して考えます。 (2022.6.19追記) 基準運転時分の計算から15年経過し、完成させる時間が取れずこのまま公開せずに札幌開業を迎える可能性が見えてきましたので、書けている分だけでも公開することにしました。何もないよりはあった方が良いでしょう。 第二青函どころかTOTも昨今の状況では難しそう、船舶移行はデメリットが大きすぎると思われるのでこのまま行くと青函間がボトルネックのままになりそうな雰囲気が漂っていますが……。 経緯上駅名・技術情報その他諸々2007年当時の知見で書かれた内容ですので、お手数ですが随所固有名詞等は2007年⇒2022年に読み替えてください。 |
●総合条件 ●車輌 ○概要 ○例1:2L20M2L ○例2:2L6M8T6M2L ○例3:3L6M8T6M3L ○例4:5L20T5L ○性能設定 ●Train On Train実施例 ○概要 ○搬入出手順 ●基準運転時分・ダイヤ例 ○概要 ▼例1:2L20M2L ○個別条件・基準時分 ○運行ダイヤ ▼例2:2L6M8T6M2L ○個別条件・基準時分 ○運行ダイヤ ▼例3:3L6M8T6M3L ○個別条件・基準時分 ○運行ダイヤ ▼例4:5L20T5L ○個別条件・基準時分 ○運行ダイヤ ●参考:Le Shuttle(ユーロトンネルのカートレイン) |
●総合条件 これは、先の海峡線ダイヤ考察と同様に取り 扱う。但し、P-17荷重(軸重17tを4軸/20m、等)を最大限活かすために軸重制限は17tとした。 閉塞問題、輸送力についても同様の判断なので省略する。 |
●車輌 ○概要 上越新幹線貨物輸送の場合とは異なり、ダイヤに比較的シビアな制約が課されるので具体例では単一の例のみを挙げて済ませるようなことはせず、比較の末に残った4例を併記することとする。 従って、まず共通点を記した上で、続いて各車輌例の相違点等を個別に挙げていく。 最高速度240km/h。但し余分なコストを抑えるため平坦線均衡速度はそこまで取らず、降坂時に限って240km/hまで加速できる性能の足回りを用意するという形を取る (平坦線均衡<240km/h<下り12‰均衡)。 なお輸送力の制約上、コキ20輌という点については固定しておく。 所要時分算定での計算上運転速度の上限は制限速度-5km/h及びATC頭打ち速度-5km/hとし、曲線通過速度はコキ100系列の本則+5kmより3.7√Rを使用した。 幾通りかのパターンで加速度曲線を引き、その内最も出力の低い2パターンについては平坦線均衡210km/h程度として実際に運転曲線の計算まで行って検討した所、旅客列車が275〜300km/h程度に留まるのであれば青函間はこの最も出力の低いパターンでも必要最低限のレベルには達していると判断できたので、それと比較例とを示しておく。 まず、P-17荷重を基準に荷重分布を考える。20mボギー車の軸重17t以下という条件、及びコキ100系列の連結面間が20mであることから、所謂コキごと(Train on Train:TOT)による最大積車質量68t/輌、コキ100系列の諸元を参考に最大貨物荷重32t/輌とした。20輌でTOT最大積車質量1360t、コキ最大積車質量1000t、最大貨物荷重640tである。この場合、TOT利用の列車についてはコンテナ質量を6.4t/個に制限するか、または原則4個/輌積載に抑えて質量次第では積み増して5個/輌に、等といった対策を講じる必要が生じる。荷主の負担と手間を考慮すれば、JR側の取扱いのみで事足りる後者が妥当だろう。 一列車当たりの積載量が8割に減少しても、運行本数が1.5倍にあれば輸送力は1.2倍となる。 但しこれでもコキを載せる車輌の自重は18tに制限されてしまうので、軽合金を使う相当な軽量構造にしたり、場合によっては複合材の採用すら必要になるかも知れない。また、磨耗時車輪径が730mmを下回ってしまうと国交省通達(国鉄技157号)の構造基準に触れてしまうので(同67条2項4号、新幹線の車輪の直径参照)、手間を掛けて事実上の特認を取るか、振り子車一般と同じ基準770mm、新製時810mmを確保するかといった選択も迫られることになる。 続いて標準軌上での動力車であるが、高速走行を考慮して6軸ではなく4軸に限定した上で、上越とは異なり有効長の制限が比較的小さいので最もシンプルな一車体長20m軸重17tとし、運転整備質量は68t/輌とした。 より適した解を見つけるため、走行抵抗その他の値は予め計算せず各編成例検討の方で個別に求めることとする。 さて、以下に各車輌例の概要を示す。何れも狭軌のコキを標準軌用貨車に積載して固定したものを、前述の標準機用動力車によるプッシュプルで走行するものである。 なお区別の為便宜的に、コキを搭載しない車輌についてはMとすべき部分をLとする。 ○例1:2L20M2L |
←新中小 国(信) 木 古内・新函館・長万部→ | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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←新中小 国(信) 木 古内・新函館・長万部→ | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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編成総質量1632t、編成長480m。 基本的な点では例1と大差ないが、コキ積載のM車を6割に減らしたことで主変圧器・主変換器の容量を ある程度抑制できる。その分加速力と粘着性能が低下するのが若干の問題点である。 ○例3:3L6M8T6M3L |
←新中小 国(信) 木 古内・新函館・長万部→ | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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編成総質量1768t、編成長520m。 例2の問題点を抑制するために、動力車を増やしてみた。中途半端ではあるが、やはり比較対照用として。 ○例4:5L20T5L |
←新中小 国(信) 木 古内・新函館・長万部→ | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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何れも、トンネル内下り12‰勾配では軽々と235km/hに到達できる。一方230km/h超では走行抵抗が下り12‰の勾配抵抗を上回るので、ノッチを切ればそれ以上に加速することもない。 両端動力車の電動機1個当たりの動輪上最大出力はそれぞれ435kW、402kW、420kW、402kWとなり、損失を考慮しても連続定格400〜450kW程度で十分という見込みが立つ。E1・E4系程度の出力の電動機で済ませるのだから、出力面では特段問題ということもないだろう。 |
▼例1:2L20M2L ●個別条件・基準時分 まず各パターンに則った基準時分を算定し、そこから制約条件を見出す。 |
○下り
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▼例2:2L6M8T6M2L ●個別条件・基準時分 まず各パターンに則った基準時分を算定し、そこから制約条件を見出す。 |
○下り
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▼例3:3L6M8T6M3L ●個別条件・基準時分 まず各パターンに則った基準時分を算定し、そこから制約条件を見出す。 |
○下り
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▼例4:5L20T5L ●個別条件・基準時分 まず各パターンに則った基準時分を算定し、そこから制約条件を見出す。 |
○下り
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●参考:Le Shuttle(ユーロトンネルのカートレイン) Le Shuttle, the locomotive from Eurotunnel(Gabriel MOISA、2002年)という資料が見つかったので、これから参考になる部分を引用してみる。 諸元については 動軸上出力5600kW、同引張力400kN、設計最高160km/h Bo-Bo-Bo、1C2M3群 "the nominal apparent power is 960kW at 1100 rot/min." 電動機は定格960kW/1100rpmの三相誘導機 トルク-速度図より、70km/h弱〜160km/hまで定出力であることが窺える(約21000/v[kN]でほぼ一致)。 "the motors touch the maxim speed at 139Hz and 2180V like effective value." 最高速度時、139Hz&2180V →すべりを無視した場合の回転数は4極4170rpm、6極2780rpm相当、電流は250A強/1M →定格でのすべりを約3%と仮定すると、先の定格回転数1100rpm時の速度はそれぞれ約43km/h、約65km/h。 →標準軌であり車輪径も大きいことと合わせて考えれば、6極と推測すべきなのだろうか。あくまで推測の域は 出ない上に、試算に直接関わる問題でもないので蛇足ではあるのだけれども。 この出力は「トンネル内の空気抵抗に打ち勝つため」にここまで必要とされた、との説明が為されている。 ユーロトンネルは単線断面の為、余計に必要となった側面もあるのだろう。 これをプッシュプルで運用するので最大11200kW800kN、運転最高140km/hとなる。 仮定を元に最大編成質量を推定すると、 22t*4軸*2+20t*4+41t*12+65t*12=28)=1528t およそ1500t。素直に取れば約7.4kW/tである。 0系の980tに対し定格11840kW(12.08kW/t)、キハ187は定員積車93.2tで、液体式気動車の上に補機にある程度取られるので実用上出せない数値とはいえ、定格1800PS(14.20kW/t。実用上は変速直前時点で11kW/t程度?)。 高速域での加速が鈍い681系は9両定員積車374.7tで定格2640kW(7.05kW/t)ながら72km/hで1.8km/h/sとすれば動輪上3747kW(10.00kW/t)であり、当試算の各例に比べれば決して低い出力ではない。 また、定格値で比較するとこれがほぼル・シャトル同等となり、160km/hを目標値として設定し、なだらかに加減速する際の現実的な落とし所であると見ることもできる。 これらに比べて当試算では、最低の例7では2040tに対して約16080kW(7.88kW/t)、最高の例4では1632tに対して約18560kW(11.37kW/t)という設定を取っている。 貨物実車の例 DF200 325*6=1950kW if編成重量896t(800t牽引):2.17kW/t M250 728tに対して定格3520kW:4.84kW/t 例2、4に対して約1.5倍、一方常用速度は約2/3。 →ほぼ平坦線用、山越えには向かない 流石にDF200は大幅に上回るが、逆に言えばその程度 走行抵抗がE4ベースでも均衡速度の向上は極端に大きなものにこそならないが、全体的に10〜20km/h程度の引き上げが期待できる。 これにより、例4の条件設定+走行抵抗軽減でも例3の条件設定とほぼ同等の走行時分が期待できることは前述の通り。 トンネル内長距離連続登攀という特殊条件もあり、徒に出力を上げるのみならず、平滑化等による走行抵抗の軽減も重要なポイントと考えられる。 旅客輸送に用いないのだから、この際走行抵抗を優先させて、E4以上に奇妙な前頭部形状となってもやむを得まい。 あくまで、無駄を極力排した性能設定としたことがここによく表れているといえるだろう。おそらくやり過ぎの部類だろうとも思うが。 |
念の為記しておきますが、以上は公開特許広報を参考にしつつも、それ以外は例によって既設設備等一部の例外を 除いて全て公表された計画を下敷きとして独自に試算したものです。あくまで一個人の解釈及び試案ですので、検索等で 来られた方は誤解の無き様。 当然ながら、引用は御自由にどうぞ。 ○履歴 立案:2006/4/27 着手:4/30 条件設定:8/24 比較・仕様第1候補決定:8/26 比較・仕様候補全決定:9/2 TOT実施例付図作成:11/12 TOT実施例解説作成・動画GIFのみ先行公開:11/17 TOT各例基準運転時分:12/21 新幹線列車ダイヤ作成:12/28 ※2022/6/19公開範囲外 TOT列車ダイヤ作成:2007/6 ※2022/6/19公開範囲外 未調整のまま公開:2022/6/19 : いつか調整予定 参考資料:○ルート・線路条件等 ・世界の高速鉄道(佐藤芳彦、1998年)、 ・新幹線テクノロジー(同、2004年)、 ・日本鉄道名所1函館線・根室線・宗谷線(小学館発行、1987年)、 ・日本鉄道名所2東北線・奥羽線・羽越線(小学館発行、1986年)、 ・5万分の1地形図蟹田、木古内、七飯(以上3点 国土地理院、2005年)、 ・北海道新幹線関連広報・報道、 ・JR時刻表 ○現状ダイヤ・輸送量等資料 ・2006JR貨物時刻表、 ・JR時刻表2006年3月号及び8月号並びに過去十数年分、 ・北海道新幹線スレッド まとめページ内「北海道新幹線の並行在来線について」、 ・JR貨物本社サイト、同北海道支社サイト ○車輌・コンテナ等資料 ・特開2005-262914(JP,A)「貨物列車及び列車搬入搬出方法」(出願人:JR北海道)、 ・世界の高速鉄道(佐藤芳彦、1998年)、 ・新幹線テクノロジー(同、2004年)、 ・インバータ電車制御概論(飯田秀樹・加我敦、2003年)、 ・新幹線はもっと速くできる(川島令三、1999年)、 ・2006JR貨物時刻表、 ・モーダルシフトを支える 機関車・貨物輸送システム 東芝レビュー Vol.58 No.9(長瀬光範・沼崎光浩、2003年)、 ・スーパー レールカーゴの開発 電気学会誌 Vol.125 No.5(淺倉康二・中川哲朗、2005年)、 ・Le Shuttle, the locomotive from Eurotunnel Leonardo Electronic Journal of Practices and Technologies Issue 1(Gabriel MOISA、2002年)、 ・路面電車とLRTを考える館内「日本 のLRV画像・図・諸元」、 ・国鉄技第157号 鉄道に関する技術上の基準を定める省令等の解釈基準について (国交省鉄道局長通知、2002年)、 ・北海道新幹線想定ダイヤ及び北陸新幹線想定ダイヤ(拙著)、自筆ノート、 etc. (以上敬称略) (C)2006-2022 far-away(◆farawagyp.)
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