山形新幹線機能強化検討委員会が検討したという、新板谷トンネル掘削による新幹線規格新線が
完成した場合について考えてみました。 東北新幹線内は例によって先の北海道新幹線想定 ダイヤのスジをそのまま引用し、福島〜新庄間について新たに引いています。 なお、新板谷トンネル新線に直接関わりのない箇所については、最大のネックである福島構内を始め 全線で現状通りとしました。つまり新線以外の建設コストは不要であるということです。 (2006/4/5追記) 北海道新幹線ダイヤ案の再作成により前提となる東北新幹線内の時刻が変わったので、一旦白紙にして 組み直すと共に比較対象として現行線経由でのダイヤも追加で組みました。 (2007/8/11追記) E3系新製投入による400系置き換えが発表されたので、その点の修正を行いました。 |
●車輌 ●ルート ●運行ダイヤ(新板谷トンネル経由) ●運行ダイヤ(板谷峠現行線経由) ●比較 ●総括 |
●ルート 配線については新線関連部分を除いて基本的に変更なし。新線建設それ自体のみで 完結する最低限コストで改良する場合の効果を検討するためである。 新線ルートは、機能強化検討委員会関連の報道に合わせてトンネル延長が21.9kmとなる様に 選定した。庭坂下り方0.4km地点で平面交差によって現行線から複線分岐し、関根下り方0.1km地点で 大型ポイント2基によって現行線(単線)に合流する。差し当たって前者を西庭坂信号所、後者を 北関根信号所と仮称する。駅からの距離が距離なので、それぞれ構内扱いしても実用上の問題は ないだろうが、区別し易くするためにここでは敢えて別扱いにしておく。 福島駅は改良が成れば相当に柔軟性が向上するが、ここも敢えて変更しないでおくこととする。 |
●運行ダイヤ(新板谷トンネル経由) 現行線内に於いては現行ダイヤでの所要時分を参考にした。 新線部分については、ポイントから500mほど入った辺りにデッドセクション設置、25kVで 最高275km/hとして計算してみた所、現行線を使用する部分を含めて所要時分が上下とも 福島〜米沢間16分0秒という結果が出た(15秒未満端数切り上げ)。 これは機能強化検討委員会の 試算と一致するので、先の試算でも相当速度を出す仮定で試算をしたことが窺える。 因みに最急勾配10‰で庭坂方から19km、関根方から2kmの拝み勾配としてみた所、新線延長の 都合により下り列車では255km/hまでしか加速できなかった。 ダイヤの概要としては最大で山形行新庄行各1本を1サイクルに含む1時間サイクルとし、それと 共に新庄行として引いたスジは時間帯によって米沢〜山形間無停車とするか全駅停車とするかを 組み替えられるようにしてある。 また、余裕時分では苦しい程度の遅延時の為に別途の回復用スジも組み込んでいる。 普通列車についてはダイヤグラムを以って代える。 |
○下り
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○上り
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上りの全列車で福島到着時に2分0秒、更に上りの内福島着毎時31分の列車の一部について北赤湯
信号所〜赤湯間で1分0秒の余裕時間を組み込んである。 これに沿ったダイヤグラムは次の通り(東北新幹線内は完全に同一なので新白河以南は省略する)。 |
やまつば:緑実線(細)── | つばさ(回復用スジ):緑点線(細)- - - - |
つばさ(臨時延長スジ):黄破線(細)─ ─ ─ | 在来線内ローカル:水実線(細)── |
ほっかい速達:青実線(太)━━ | ほっかい準速達+こまち速達型:紫実線(太)━━ |
はやて+こまち緩行型:赤実線(太)━━ | 各停やまびこ:白実線(細)── |
大宮発着:黄実線(細)── |
福島〜米沢間の普通列車は現行線経由で計算した。 つばさは緑点線のスジにさえ乗れれば、大勢に影響を与えることなく且つ上り列車が福島に 定時到着可能である。 400系の2連・3扉化による普通運用への転用も考えられるが、ここではひとまず 現実的な現行通りの719系5000代による運行を前提としたスジに留めておく。 もし行うならば1M1Tにしても定格出力1.75倍、更に130km/h運転可能と相当な時短効果が 見込めるが、鋼製車体という一点が気懸かりか。 |
●運行ダイヤ(板谷峠現行線経由) 線路条件はすべて現行線のままとした。 一方で、冬季の遅延を考慮して交換の為の退避は現行よりも長めに設定してある。 ダイヤの概要としては上の例同様で、相違点は板谷峠に懸かる部分のみである。 |
○下り
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○上り
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上りの全列車で福島到着時に2分0秒、更に上りの内福島着毎時35分の列車について大石田〜袖崎
間で0分30秒、北赤湯信号所〜赤湯間で1分0秒の余裕時間を組み込んである。 在来線内で現行に比べ若干余計な時間が掛かる結果となっているが、それでも東北新幹線内での 所要時分短縮によって東京〜山形間の平均所要時分は現行よりかえって短縮されているのである。この 程度は安定性を高めるためのものとしてはやむを得ない範囲ではないだろうか。 これに沿ったダイヤグラムは次の通り(東北新幹線内は完全に同一なので新白河以南は省略する)。 |
やまつば:緑実線(細)── | つばさ(回復用スジ):緑点線(細)- - - - |
つばさ(臨時延長スジ):黄破線(細)─ ─ ─ | 在来線内ローカル:水実線(細)── |
ほっかい速達:青実線(太)━━ | ほっかい準速達+こまち速達型:紫実線(太)━━ |
はやて+こまち緩行型:赤実線(太)━━ | 各停やまびこ:白実線(細)── |
大宮発着:黄実線(細)── |
福島〜米沢間で全列車を現行線経由とした点以外は、基本的に上記例と同じ方針で作成した。 やはりつばさは緑点線のスジに乗れれば、大勢に影響を与えることなく且つ上り列車が福島に 定時到着可能である。 結果的に生じた最大の相違点は、交換の都合で福島停車時間と在来線内運転間隔に大幅な変更が生じた 点である。置賜〜高畠辺りで1駅間でも複線化されていれば、ここまでする必要はなかったのだが…所要 時分の短縮と、運転間隔とを秤に掛けた結果でもあるので先の東北新幹線内ダイヤ案に従う以上致し方ない。 青函トンネルの制約がここまで尾を引いてしまった。 |
●比較 現行及び上記+αのケースに於いて、パターン内列車(現行)及び定期列車(上記試算例)の 平均値及び最短値で比較する。 |
区間 | 東京〜山形 | 東京〜山形 (仙台回り) |
福島〜山形 | 東京〜福島 | 東京〜新庄 | 備考 | |
338.3km(新) 342.2km(現) | 388.2km | 83.2km(新) 87.1km(現) |
255.1km | 399.8km(新) 403.7km(現) | |||
新板谷トンネル経由 | 平均 | 2:3023 (135.0km/h) |
2:3500 (150.3km/h) |
0:5542 (89.6km/h) |
1:2940 (170.7km/h) |
3:1557 (122.4km/h) |
上記例より |
最短 | 2:2400 (141.0km/h) |
0:5045 (98.4km/h) |
1:2415 (181.7km/h) |
3:1100 (125.6km/h) | |||
所要差分 (平均) |
0:1512 | 0:0000 | 0:1738 | 0:0000 | 0:1456 | ||
板谷峠現行線経由、 福島以南高速化 |
上記例より | ||||||
平均 | 2:4535 (124.0km/h) |
2:3500 (150.3km/h) |
1:1320 (71.3km/h) |
1:2940 (170.7km/h) |
3:3053 (114.9km/h) | ||
最短 | 2:3900 (129.1km/h) |
1:0430 (81.0km/h) |
1:2415 (181.7km/h) |
3:2600 (117.6km/h) | |||
現在 | 平均 | 2:50 (120.8km/h) |
3:05 (125.9km/h) |
1:10 (74.7km/h) |
1:38 (156.2km/h) |
3:36 (112.1km/h) |
2005年12月改正時点 |
最短 | 2:31 (136.0km/h) |
2:59 (130.1km/h) |
1:02 (84.3km/h) |
1:26 (178.0km/h) |
3:15 (124.2km/h) | ||
バス利用 | 平均 | 5:40 | 5:40 | ―― | 5:04 | 7:15 | 東京口はいずれも新宿発着 |
仙台経由は乗継ぎ9分で計算。航空は競争相手として取るに足らないので省略した。 元々福島〜関根間は複線化されているので、待避の削減による所要時分減の効果もなく 走行時間の減少のみがほぼそのまま現れる形となった。 福島〜山形間で上で試算した分の所要時分がやや多いが、これは新幹線上の単独走行や 福島14番線占拠に繋がるダイヤの乱れを抑える目的で余裕時分を多めに取った ためである。余裕時分次第であと3〜4分は縮められるが、敢えてそこまでする必要もないと 判断した。 仙台回りとの比較の説明については後述する。 |
●総括 純粋に、15〜6分短縮に見合う投資かどうかの問題である。実際の所、先日の報道の通り 現実問題として扱うには困難なのではなかろうか。 また福島以北が現状通りでは、東北新幹線が360km/h化された場合仙台〜仙山線回りよりも 奥羽本線回り新在直通の方が遅くなってしまう。一般に30分に相当すると言われる直通運転 それ自体の効果があるのでこれだけではそう大きな影響はないだろうが、万が一流れた場合には わざわざ改軌して新在直通を行った意義が損なわれ、また東北新幹線内での目的地別分散化が 逆行してしまうという懸念がある。 巨額の資金は無いので新線建設とは別のアプローチで高速化を図るしかないだろうが、果たして 踏切を排して高速化する以外に抜本的な手立てがあるものだろうか?東北新幹線内での時間短縮を 図ろうにもE3系で300km/h向上の余地があるのは宇都宮以北のみ、せいぜいあと2〜3分が 良い所である。 …どうも、先行きはあまり宜しくないようだ。 車体傾斜でも行えば同等に近い効果もあるだろうが、こちらはこちらで新車を入れる 必要がある。競争相手を事実上潰してしまった現状にあって、今後JRとして大きな投資が 行われるとは考え難い。これもやはり自治体が(正確には三セクの新幹線保有会社を用意して)行うか どうかの問題と考えてよいだろう。新線の費用効果と秤に掛けてこちらを取るかどうかは 微妙な所か。 あとは、レールの交換時期に合わせ分岐器を番数の大きなものに変更して130km/h走行が 可能な区間を延ばすことも一手だが、現状を鑑みるに効果は大きくない。 この程度なら、延伸に投資した方が良いとの判断も納得できる。しかし、延伸したとて 直通それ自体以上の効果があるかどうかは非常に怪しい。そもそもその選択肢すらも、羽越本線 高速化の方が合理的との判断に傾いて消えかけている有様である。 何れにせよ、大幅な速達化も困難なら利便性の向上も困難である。ある意味、在来線を そのまま残した時点で新在直通以上への進化を拒否した路線であると言えるかもしれない。 |
念の為記しておきますが、以上は既設設備等一部の例外を除いて全て独自に試算したもの
です。あくまで一個人の試案ですので、検索等で来られた方は誤解の無き様。 なお、引用は幾らでも御自由にどうぞ。 ○履歴 立案:2005/10/上旬 着手・車両条件:12/8 線路条件:12/11 基準所要時分試算:2006/2/12 特急スジ・WinDIA打ち込み:2/24 その他スジ・WinDIA打ち込み:2/25 全体調整・公開:2/28 北海道新幹線ダイヤ案再作成に伴う再作成 新板谷トンネルルートスジ・WinDIA打ち込み::3/31 現板谷峠ルートスジ・WinDIA打ち込み:4/5 全体調整・公開:4/14 修正(E3系新製投入の反映):2007/8/11 参考資料:○ルート・線路条件等 日本鉄道名所2東北線・奥羽線・羽越線(小学館、1986年)、JR時刻表、Mapion、 20万分の1地勢図福島(国土地理院、2005年)、 2万5千分の1地形図福島北部、板谷、天元台、米沢東部 (以上4点国土地理院、1998/1996/1990/2001年)、 Wikipedia(山形新幹線、山形線、奥羽本線)、 JR東日本各駅乗車 人員(2004年度)、山形新幹線機能強化検討委員会関連各報道 ○現状ダイヤ資料 JR時刻表2005年7月号、JR東日本新幹線時刻表(2005年12月10日改正版)、 高速バス時刻表2005〜06年冬・春号(交通新聞社、2005年) 特急列車高速化への提言(川島令三、1998年) ○車輌資料 世界の高速鉄道(佐藤芳彦、1998年)、鉄道ファン1992年4月号、 JR電車編成表'05夏号(ジェー・アール・アール、2005年)、etc. (以上敬称略) (C)2006-2007 far-away(◆farawagyp.)
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