初期型問題の背景について、若干突っ込んだ説明をさせて戴きます。 内部情報を抜きにして(元々この手の内部情報など入手できない立場の人間ですが)、一般人が入手できる範囲の情報だけで 充分に予測できる範囲だった事が現実に起きたものですから。尤も、ゲームとは別の分野の業界誌からの情報が含まれますので そういう意味では一般的でないとも言えますが。また、ハード・ソフト両面に於いて読み手に最低限の知識がある事を前提に 書いておりますのでその点も御注意を。ある程度は噛み砕いて説明しておりますが、「0.25μm」「BIOS」等で拒否反応を 起こされる方は前提となる知識が著しく不足している筈ですのでお引き取りください。 また、この内容につきましては「事実をただ事実として」受け止められる 方以外は閲覧を御遠慮ください。展開については多少誘導的な面もある事でしょうが、少なくとも内容については「仮 に」と記してある箇所以外は不特定多数の人間が知っている事実のみから構成されています。良いか悪いかではなく、あくま で「何があったのか」を、以下の文章が持つであろう誘導的な部分をも排して 認識できる方以外が御覧になっても良い結果にはならないと確信しております。 空白を空けてありますので、「自分は問題無い」という方のみ御覧ください。無論そうでない方も止める事はできません が、どの様な感情を持たれようと責任は負いかねますので。 |
(注:この文章の趣旨は擁護でも批判でも、ましてや罵倒でもありません。管理人の知る限りの事を書いたまでです) さて、「初期型問題」というのは周知の通り、初期型PS2でプレイした際にコーファーの遺跡のチンピラ×3戦等に於いて 途中から操作不能となってしまう問題の事を指します。よく知られている強制リロード法の他、一部の方はLvを上げて秒殺 してしまうという回避法を取られている様ですが、要は「特定の戦闘での戦闘動作中BGMリロードを回避する」事が回避法に なっている訳です。起き得る戦闘の条件の見当は付きますが、確認する術が無いのでこの場で述べる事はできません。 読み込みの際の問題、そして再現性があり特定の型番で頻発する事から(30000以降でもある程度は起きていますが)、原因の 一端がハードにも存在する事は容易に予測できます。この段階ではハード要因の主な可能性は三つ考えられますが、内一つの チップ内部のバグについてはハード開発元で対応でき、無視できる筈なので考慮しません。 まずは残る二つの内一方、DVDドライブの問題から挙げてみましょう。所謂「初期型」はPS2発売から13ヵ月半の間に出荷 販売されたものですが、その後期はともかく発売当初はDVDドライブの製造自体がまださほど成熟した時期でなかったという 点が指摘できます。量産自体は行われていましたが、まだまだ「これから普及していく」という段階で一般的ではないので どうしても信頼性での不安は残る訳ですね。尤も、DVD倍速(2700kB/s)程度では当時の売れ筋と同等の読み込み速度に過ぎない ので、これは製造段階では単に不安材料程度のものでしかないでしょう。問題は経年変化の方にあるかと。 ハード要因の可能性の最後の一つは後回しにして、次にソフト面の問題を見てみましょう。公式発表にあった「ライブラリ ソフトウェアの一部不具合が原因」の他、「読み込み量が多いので」という主張があります。ところがこれについては否定 できないどころか、寧ろこれが原因の根本である可能性もあるのです。というのも、BGMリロードが鍵になっている事が 明らかになっている以上、読み込みが関わっている事は疑い様が無い訳です。また、「特定のイベント戦闘等」という事 から、何らかの一般には発生し得ない不具合が原因である事までは判ります。おそらく読み込みの集中過多による問題だろうと 推測する事が可能ですね。 逆の言い方をすれば、SO3以上に激しい読み込み要求をドライブに対して行うソフト同じライブラリを用いて作成されて いればそのソフトも同様の問題が起きる筈ですが……如何せん、そういったソフトは存在しない様なので確認は不可能と 思われます。 そして何より問題なのは、ハード要因の可能性の最後の一つ。初期型では頻発しながらも30000以降の本体では発生頻度が 大きく落ちる事から、ハード要因の可能性としては最も可能性が高い筈です。但し管理人が知る方の中には初期型でHDD使用時と 同程度の頻度でしか問題が起きていない、また30000以降の本体でもこの問題に遭遇したという方も居るので、初期型そのものが 原因なのではなく、あくまで問題を増幅しているに過ぎないと考えた方が良いでしょう。 その可能性というのは、CPUそのものが関わっている可能性です。SCPH-18000以前とSCPH-30000以降では消費電力が違うという のはある程度知られている事ですが、その最大の理由はCPUが違う事なのです。CPUが違うとはいっても種類が違うのではなく、主要 変更箇所として挙げられるのはコアがGPUコアと共に0.25μm→0.18μmにシュリンクされた事による再設計くらいのものですが、しかし 余裕を持った動作が主のソフトならともかくAAA作品は以前からハードの能力をギリギリまで使用する事で知られ、またソースの 多くはアセンブラで書かれています(SO3の開発末期までそうかは判りませんが)。後発バージョンに不具合があったのならば多少の 事ならファームウェアでどうにでもなりますが、後発バージョンベースの開発環境で作られたものが先発バージョンの上で走って、過 負荷が掛かった時に果たして対処し切れるかどうか。先に触れた様に読み込み時の問題が原因の根本であるならば、その過負荷に対処 できるかどうかというギリギリの部分で初期型コアと30000以降コアの挙動の差が結果の差となって現れるというのが自然な発想では ないでしょうか。なお、37000以降では更に0.15μm(150nm)にシュリンクされている様ですが、こちらの変化はさほど大きなものでは ない様です。 DTL-H10000(Debugging Station)は保守や修理の名目で中身が次々と現行機種ベースのものに切り替えられて行きます。つま り以前の機種での動作確認を行おうと思えば、開発用でない普通のPS2を確保しておく必要がある訳です。さて、綱渡りの 開発でそういう検証が行えるものでしょうか?現状では普通のPS2でRやRW(DVD-RW/+RWやDVD-RAMは策定時期の関係でこの用途 には元々まともに使えないでしょうけど)のソフトを使用する手段はまともな手段では存在しないので、灰色の領域に手を出すか 開発中検証を断念するかの何れかしか選択肢は無い訳ですが、果たしてどちらを選択する例が多いのか。 開発環境の改善に期待できないとなればプレイヤー側の初期型PS2をどうにかするしかありませんが、たとえ有償だと しても、まさかファームウェア交換を「あの」SCEIが行うとは思えませんし。従ってプレス後のROMを使用して検証するしか 事前検証の術は無い訳ですね。そこで初期型問題が判明してくれればまだ発売前に公表するという手段を取れる訳です が、SO1ではマスターアップが大慌てで結果サウンドテストがああなって、SO2もVPもSOBSもSO3も発売延期 で、これで事前検証し、万が一の際に公表する様な時間を取れるものでしょうか。 発売前に、とある未確認情報が溢れる世界最大のコミュニティの一つであろう場所(万が一が怖いので何処かは明言でき ません。想像は容易に付くでしょうが。……なお、垂れ込みの類でも無い限り管理人が見る事は滅多にありません)で「実は完成 発表会の後もまだ数日間は開発が続いていた」なる情報が流れましたが、仮にこれが本当だとすればそんな対応は無理と言わざるを 得ないでしょう。ゲームソフトの媒体がROMカートリッジから光ディスクに変わり、任天堂の手から離れた事によって流通経路も 変化してマスターアップ後の製品製造に要する期間は短縮されましたが、それでもなお1週間程度は要する訳です。 仮にマスターアップが10日としてみましょうか。プレス完了が17日とすると発売10日前。……現実に起きた騒動の顛末に 照らし、この後にどの様な事になったかを想像してみましょう。再現性のある問題だという事を確定するだけで1〜2日、調査 結果発表が行われたのは7日後なので2/24となります。が、ユーザからの大量の苦情という圧力が無いので公式に認めるか どうかすら不明です。仮にこの時点で判明していたとしても、販売店入荷2日前で果たして動けるかどうか。風評を考えれば 難しい所です。その上、これはあくまで製品版ができた後に更に検証をするという慎重なメーカだという仮定の話であっ て、現実がそうか否かは皆目不明です。製品版完成後発売までの間に各型番での検証を行うという意思が無ければ、マスター アップがいつであろうと型番依存の問題はノーチェックのままで起こり得る訳ですね。 最後に、公式に言及されたライブラリソフトウェアの問題。状況から察するに、これはおそらく初期型コアに対応し互換性を 確保する為の箇所が抜け落ちていたか十分に検証されていなかったのだと推測されます。SCEIの種々の行動を見る限り前者の 可能性が濃厚ですが、ここから更に突っ込むのはこの場の趣旨に反するので止めておきます。 このCPUコアのシュリンク1回目について管理人が最初に情報を仕入れたのは半導体誌からではありますが(計画段階)、ゲーム業界 にも新型番発表の時点で流れてはいる筈です。ただ、消費電力が減る事以外の影響をその場で認識できる方がどれだけ居るかが 疑問なので(少なくともソフトにだけ目を向けている限りは知らずとも開発に影響無い)、おそらくまともに扱われなかったの でしょう。ゲーム誌の中でも取り上げたものが一つはあった様に記憶していますが、あくまで消費電力減としてしか扱われて いませんでした。尤も、ゲーム誌のニュース欄を欠かさず読む様なゲーマーでもその多くは気にしない筈なので、言及されない のは寧ろ当然の事ですが。 結局、考えられる問題点を理想論を前提に挙げるとすれば、
なお、この手の文章では比較的長いものだった為に肝心な部分を忘れられている恐れがあるので改めてもう一度。 これは、あくまで初期型問題に限って取り上げた文章である事を お忘れ無く。 以上です。 |